2012年12月8日土曜日

現代マクロ経済学にも通貨供給量はある

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通貨供給量の分析をしたければ、モデルに通貨供給量を加える必要がある。通貨供給量の分析をする必要がなければ、モデルに通貨供給量を加える必要はない。

単にそれだけなのだが、経済評論家の池田信夫氏はそれが理解できないようだ。以下のように言っている(BLOGOS)。

現代の動学マクロ経済学には、通貨供給量という変数は出てこないのだ。インフレ率を決めるのは金利だから、ゼロ金利では量的緩和でデフレも円高も止まらない。

これは間違いだ。ケーガン・モデルやKrugman(1998)やEggertsson and Woodford(2003)やAuerbach and Obstfeld (2005)を見ても、P=M/Y(P:価格,M:通貨供給量 or 家計が保有する通貨量,Y:国民所得)のような定式化はされている*1

そもそもモデルに通貨供給量が入っていなかったら、財政ファイナンスでインフレになるとは言えない*2 。池田信夫氏は同じブログのエントリーで、マネタリーベースを増やすとインフレになるとも言っているのだが、同じ文章の中でも矛盾している。

200兆円の紙幣を発行すると、インフレが起こって民間で利用可能な資源が減る。つまり通貨発行益は、民間に対するインフレ課税なのだ。

おっと、だからと言ってマネタリーベースが増えたらインフレになるとか飛びつかないように。通貨供給量はマネーストック(マネーサプライ)を意味していて、理論的にも経験的にもゼロ金利ではマネタリーベースを増やしてもマネーストックが増えない。

どうやったらマネーストックを増やせるかって? ─ 理論的にはインフレ期待を引き上げる事が重要で、インフレ期待の形成には中央銀行のコミットメントが大きな役割を果たすと考えられている*3。財政ファイナンスがインフレを招くのも、同じフレームワークで説明することができる。

*12003年ぐらいから明示的に通貨供給量を扱わないキャッシュレスなモデルが増加したようだ。ただし、最近でもKiyotaki and Moore(2012)のように流動性を取り扱う場合はマネーを明示的に含んでいる。関心がある人は、Togetterを参考のこと。

*2FTPLで考えれば、政府財政がインフレ率をほぼ決定する。ただし河越・広瀬(2003)は、財政赤字のゼロ金利政策という日本のポリシーミックスは流動性の罠からの脱却のために十分なはずだと議論している。つまり容易にデフレ脱却が可能になる。

*3クルッグマン論文を使って、池田信夫を応援する

3 コメント:

POM_DE_POM さんのコメント...

池田氏の記事を見ると

山本議員?(動画見てない><;)の言う貨幣の発行量
=バランスシート
=通貨供給量

という意味で使われてるっぽい感じで、用語が散らかってる気もしますが。
高橋洋一氏も含め、マネタリーベースを増やせば云々、という話を念頭に置いた記事かと思います。


>現代の動学マクロ経済学には、通貨供給量という変数は出てこないのだ。
つまり、池田氏の言ってる通貨供給量はマネタリーベースの意味かと。


>マネタリーベースを増やすとインフレになるとも言っている
マネタリーベースとは言ってません。


単なるケアレスミスか、用語の使い方の間違いな気が。

uncorrelated さんのコメント...

>> POM_DE_POM さん
>>マネタリーベースを増やすとインフレになるとも言っている
> マネタリーベースとは言ってません。

200兆円の紙幣を発行は、200兆円のマネタリーベースの拡大になります。
金利がインフレ率を決めると言うロジックからは、これもインフレ率に影響は無いはずなのです。

POM_DE_POM さんのコメント...

>現代の動学マクロ経済学には、通貨供給量という変数は出てこないのだ。
(動学マクロ経済学の)リンク先の記事を見ると通貨供給はベースマネーを意味しているようですし、モデルに通貨供給を加える加えないの話ではなく、通貨供給を目標にするなんて話はない、程度のニュアンスに思えます。
書き方としては明らかにおかしいですが。


>インフレ率を決めるのは金利
以前の「量的緩和でインフレは起きないけど、やり過ぎるとハイパー」と同じ問題かと。

フリードマンのいったようにインフレは金融的現象だが、サージェントのいったようにハイパーインフレは財政的現象である。
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51825180.html

それはそれ、これはこれ、みたいな。
(金融政策が)インフレ率に「働きかける」のは金利、とでも書いておけば良いのでしょうけど。

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