2010年10月4日月曜日

テロリストはiPhoneを装備?英国で、とあるアプリが問題になる

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民間旅客機が、テロで地対空ミサイルのターゲットになるのではないかと心配されている。実際に、2001年にウクライナ軍の地対空ミサイルが誤ってロシアの旅客機を撃墜しており、2002年にはアフリカのケニアでイスラエルの定期旅客機が2発の地上発射携帯式地対空ミサイルに狙われた。この対空ミサイルによるテロの手助けになる可能性があると、あるスマートフォンのアプリが英国で問題になっている(Mail Online)。

英国のPinkfroot社がiPhoneとAndroidで£1.79(約170円)で配布しているThe Plane Finder ARは、空にカメラを向けると、その方向にある旅客機の航空会社・便名・距離・高度・離陸地・目的地・航路を表示してくれる、拡張現実ソフトウェア(AR)だ。2,000人以上がこのアプリケーションをダウンロードしている。

このソフトは、現在では一定以上のサイズの旅客機には搭載が義務づけられている空中衝突防止装置(TCAS)で用いられる、次世代標準のADS-Bの情報を用いている。ADS-Bの受信機は約£200で世界の愛好家がADS-Bの情報網を構築しており、The Plane Finder ARはそれを利用しているようだ。航空ファンはこの手の情報が大好きで、日本でもACARSの受信機と表示ソフトウェアを楽しんでいる人がいる。

他にも同種のアプリケーションはあるが、The Plane Finder ARは使い勝手が良いため、テロリストの手助けになるのではないかと心配されているようだ。保守党の下院議員で、テロ対策審議会の分科委員会の前議長のPatrick Mercerは「敵に目標の情報を与えるものは何であれ気が狂っている。政府はこのような違法な設備の取引に目を向けるべきだ。」と述べている。

Pinkfroot社の社長は、単に自由に放送されている情報をまとめているだけであって、英国や他の国の当局からいかなり異議も申し立てられていないと述べている。ただし、テロリストがPlane Finder ARを使いうることはありえるため、リスク軽減のために表示は約30秒遅れており、狙撃には使えないようにしていることは認めている。ゆえに実際に狙撃するには、ADS-B受信機かレーダーが必要になるようだ。英運輸省も、同ソフトが旅客機を標準する能力は無いとしている。

さて、高高度で視認できない航空機を狙撃するには、S-200 Angaraのような大型の兵器が必要になる。このミサイルの場合、全長が10~11mで、直径が86cm、発射重量は2.8tもあるのだが、これを調達・展開する能力があるテロリストには、他のADS-B受信機を購入することも余裕であろう。恐らくアプリを禁止するより、無法地帯の紛争地域を回避して飛行する方が、対策としては有効だ。

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