ルワンダ紛争の舞台の一つにもなったキブ湖だが、それ以上の規模の殺戮が、今度は大自然の手によって起きるかも知れないと危惧されている。
Guardian誌によると、その自然災害の元凶を利用して発電を行いつつ、自然災害のリスクを減らそうという試みが行われているそうだ。
キブ湖の周辺は火山活動が活発で、ギブ湖の地下にもマグマが存在するそうだ。火山活動によって発生した炭酸ガスとメタンガスは地下水に溶け込み、ギブ湖の底から湧き出していると考えられている(左図)。炭酸ガスが溶け込んだ水は比重が重く湖の底にたまっていく。上層に行くほどガス濃度が低い水が、下層に行くほどガス濃度が高い水が存在する状態になる。そして水圧のため、ガス濃度が高い湖水は下層では安定するため、現在のギブ湖の状態は安定していると考えられる(The Causes of Lake Overturn)。
しかし、何らかのショックが湖水に加わり、下層の炭酸ガスが一気に湖の表層に噴出してくる時がある。英語でLimnic eruption、日本語で湖水爆発とも淡水湖沼噴出とも言われるこの現象は、下層の湖水が一気に表層に上昇することで、大量のガスが噴出し、湖の周辺に流れ出すと考えられている。この現象が発生すると、湖の周囲は酸素がなくなるために、人や家畜などの動物は静かに窒息死をする事になる。なお、噴出時は白い津波のように見えるであろうが、ガスは二酸化炭素なので無色透明だ。さらに時速7.5Kmで拡散していき、周辺25Kmまで被害が及ぶと考えられている。
恐怖映画のような現象だが、同現象で1984年にカメルーンのマヌーン湖周辺で37名が死亡し、1986年にカメルーンのニオス湖周辺で約1,800人が亡くなっている(BBC)。この二つの湖よりは圧倒的に大きいギブ湖では、200万人の周辺住人に被害が及ぶと考えられている。
このLimnic eruptionには明快な対策がある。パイプを使って湖下層から水をくみ上げ、ガスを抜いてしまうことだ(左の写真)。マヌーン湖は2001年から、ニオス湖では2003年からガス抜きが開始されている(カメルーン・マヌーン湖のガス抜き開始)。
しかしキブ湖では、もう少し野心的なプロジェクトが推進されている。下層の湖水に含まれるメタンガスを用いて発電を行うらしい。既に2,000万ドルをかけて発電所を建設し3.6MWの発電しており(右の写真)、数年以内に50MWまで発電量を増やすつもりだ。米企業のContour Globalは昨年、メタンから100MWの発電をするべく、ルワンダ政府と3億2500万ドルの契約を結んだ。なお、ルワンダでは電力不足が深刻であり、14世帯につき1世帯しか電力が届いていない状態だ(Guardian)。
周辺住民の安全と電力の確保の一挙両得のこの政策、環境アセスメントが十分なのか疑問の声もあるようだが、大きな反対は無いようだ。メタンガスをそのまま放出すると、二酸化炭素どころではない温暖化効果があるので、せめて燃やしたほうが良いのも事実であるし、かなり合理的な計画であるように感じる。
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