経済成長とともに交通インフラが充実して来るのは、直感的に理解できることだ。中国も海外から技術輸入を行いつつ交通インフラを充実させてきた。技術育成も図っている所が特徴で、例えば初期は、日本やドイツの鉄道車両を輸入するものの、途中から国産化していっている。最近は、「中国独自の技術」がお好みらしく、海外技術を中国独自と言いなおしているものから、かなり無理がある交通インフラ構想まで、色々なものが発明されている。
1. 20年以上前の技術を焼きなおした旅客機ARJ21
「中国航空工業第一集団公司により独自に研究開発され、中国独自の知的財産権を有する新型のコミューター・ジェット機」と称される。しかし、ARJ21はライセンス生産していたMD-90の生産設備を流用するように開発された旅客機で、胴体断面などの基本設計はMD-90を流用し、先端部分、主翼形状、垂直尾翼は良く似ている。若干変更が加えられた主翼は、ウクライナのアントノフ社が設計した。エンジンはGE、制御系(コックピット)も国外の会社が生産しており、ボーイングがコンサルトしている。約90社の関連会社のうち中国企業は4社に過ぎ無い。
2. 世界初!真空チューブ内を走行する磁気浮上式リニアモーターカー
磁気浮上式リニアモーターカーは日本とドイツで熱心に研究開発が行われており、中国ではドイツの技術を用いて上海浦東国際空港・龍陽路駅間(約30キロ)を約7分間で接続している(左図)。
このリニア・モーターカーを真空チューブ内で走らせ空気抵抗をなくし、時速1,000Kmを目指す構想が、中国で出されているようだ(Seattle Post)。1Kmあたり295万ドルという、既存のリニア・モーターカーを越える、(asahi.comによると既存の地下鉄よりも安い)施設コストが計算されているが、チューブの高い密閉性や、機内への酸素供給などが必要になるため、その程度のコストで済むのかは疑問だ。
3. バスに代わる新交通システム、乗用車の上を走る路面電車!?
中国ではバスが交通渋滞の原因になっているらしいだが、道路の上を路面電車が走ることにより、渋滞を引き起こさずに運行できる新交通システム3D Express Coachが考案されている。自動操縦で、1200~1400人が乗れる。さらにターミナルで充電して動くため、CO2排出量を削減できる効果があるとのこと。今年の終わりから、4.6億元をかけて北京の門頭溝地区で試験路線を開始するらしい(Geek.com,Mail Online)。
凄いのか、おかしいのか?
旅客機ARJ21は既に飛行しているものの、技術的には全く中国独自とは言いがたく、先進性もほとんどない。真空チューブ内の磁気浮上式リニアモーターカーは、昔の手塚治虫の漫画に出てきた記憶もあるだろうが発想的には新しくなく、技術的には実現できるかがポイントになるが、まだ着工されているわけでもない。新交通システム3D Express Coachは、かなり独創的だが、地下鉄やモノレール等の既存交通システムのインフラ整備ができないために、こういう発想に至ったようだ。全般的に見ると、中国独自の技術というか、中国独自の思考方法の方が気にかかる。
とはいえ、中国は外資主導型言えども、既に世界に誇る工業国だ。社会インフラの弱さはずっと指摘されており、交通インフラの充実は今後も取り組んでいかない課題だ。景気対策の必要性もあり2008年から13.9兆円の資金が、交通インフラ整備に投入されている(サーチナ)。これらの中国独自の技術や構想はともかく、少なくとも中国国内で交通インフラの問題に広く関心が持たれていることは事実のようだ。
2 コメント:
昔の少年雑誌に出てきた「みらいののりもの」のような中国真空チューブ鉄道、面白いですね。やはり中国は30年ぐらい前の日本っぽい感じがします。
別件ですが、誤植があります。
誤)手塚修の漫画に出てきた
正)手塚治虫の漫画に出てきた
よろしくおねがいします
コメントありがとうございます。
確かに発想に夢があって面白いですね。
誤字は直しておきました。
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