2012年6月16日土曜日

池田信夫の錯乱 ─ デフレの弊害はあるの無いの?

このエントリーをはてなブックマークに追加
Pocket

経済評論家の池田信夫氏の「デフレは不況の原因ではない」と言うエントリーが上がっていた。経済学的に云々以前に、「予想されたデフレは実体経済には何の影響も及ぼさない」と言いつつ、「流動性の罠がほぼ唯一のデフレの弊害」と主張している。錯乱しており認知症が心配だ。

1. その他に引っかかる点

上述で終了にしようかと思ったが、もう少し中身を見ていこう。流動性の罠になければ、名目金利が下方に動くので問題が無いと言う部分は、デフレ下の議論として無駄なので無視する(*1)。

自然利子率が下がったのでデフレになっていると言う主張は、日銀見解の踏襲ではあるが、そう非常識な事ではない。しかし、「インフレには持続的な景気刺激効果は無い」と言う所、「金融政策では(流動性の罠が)是正できない」と言う所は異論が出そうだ。

2. インフレに大きな効果は求められていない

失業率が自然失業率を下回ったら実質賃金が上がると言うのは、理解できる。しかし、デフレの失業率は自然失業率を上回っているはずなので、実質賃金は上がらないであろう。自然利子率に実質利子率を一致させる以上の効果は誰も期待していない。インフレにしたら実質成長率が5%になるとか思っている人はいないって。

3. インフレ目標政策はどこへ?

金融政策で是正できないと言うのは、量的緩和でインフレを創り出せない(*2)と言う事だと思うが、インフレ・ターゲット・レートの引き上げを無視している。

将来、少しインフレになっても中央銀行が金融引締めを行いませんよと宣言してみよう。すると、現在の金利では黒字ではあるものの、将来に高金利になったら赤字になってしまう投資が行われるようになる。高金利になる見込みが減るからだ。つまり投資が拡大するので、インフレ予測を引き上げる事ができる。ノーベル賞経済学者のクルッグマンが主張しているのがこれ(関連記事:日銀はクルッグマンの勧める政策をやったの?)。

4. 以前よりはだいぶ改善

「ゆるやかなインフレが望ましいことは確か」と随分と常識的にはなってきている。以前は自然利子率の存在を無視していたし、デフレかハイパー・インフレーションの極端な経済状態しかありえないと主張していた(関連記事:池田信夫『デフレを巡る3つの神話』を批判する)。後は、インフレ目標政策への理解が進めば、もうちょっと良識的な主張ができるようになると思われる。

*1疑似科学ニュースの「池田信夫は経済の基本的な理論がわかっていない」と言うエントリーは、この前半部分で惑わされて論が拡散したようだ。

*2量的緩和を行って資金調達が容易になっても、金利がゼロなので投資せずに現金のまま保有しておくだけになる。量的緩和を主張する高橋洋一氏は、流動性の罠に無いとしている。

1 コメント:

げむじぇむ さんのコメント...

みんなの党某議員のパンフレットに「デフレ脱却対策として通貨発行量を増やす」って書いてあって、そっちのほうが素人目にもヤバいです…

コメントを投稿