前のエントリーに関連して、年金支給総額z(←本当はλz)を減らすか抑制するために、年金受給期間λを減らすと言ったら、id:himaginary氏に「まあ、日本の場合、そうやって減るかと思ったら減らなかったみたいですが…」と言われたので、補足説明を行いたい。つまり、年金支給開始年齢は徐々に引き揚げられたが、年金受給期間λは増えていて、減っていない。
制度が複雑なので厚生年金における大雑把な話になるが、年金の支給開始年齢は1944年に55歳になり、それから徐々に60歳に引きあげられた。男女ともに60歳になったのは1999年だ。これから男女ともに65歳にまで引きあげられるのは、2030年になる。
支給開始年齢だけでは、年金受給期間は定まらない。平均余命を見てみよう。1944年は男性が約50歳、女性が約53歳、2000年は男性が約78歳、女性が約85歳だ(平均余命の年次推移)。
平均の年金受給期間λは、1944年は男性が-5年、女性が-2年、2000年は男性が18年、女性が24年となっている。給付金額の引き上げもあるのだが、年金受給期間λはかなり増えている。
保険料率τは、平準保険料率で見てみよう。1944年は男性11.0%、女性11.0%だったのだが、1960年に4.4%、3.1%まで低下し、1999年には25.5%になっている(公的年金各制度の保険料率算定方式の推移)。給付水準自体の引き上げ等もあったわけだが、Fanti(2012)のモデルに関連して言及しておくと、τが一定なんて事は全く無い。
「τを限度内に収めるためλを減らしたがnが思ったより下がったのでまたλを減らし、結局τは余り変わらず、が実情かと」と言う事だが、τはどんどん上がっているし、λもどんどん上がっている。
私が年金支給総額λzをzと間違いて書いてツイートして混乱を生んだ気もするのだが、何はともあれλは減っていない。これから何とか減らしていこうと言うのが、日本の一つの課題となっている。平均余命が支給開始年齢になりそうだけれども。
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