経済評論家の池田信夫氏が『「金利リスク9兆円」の数字はなぜ消えたのか』で、以下のように指摘している。2012年10月と2013年4月のどちらのレポートも、良く読んでいないようだ。色々と勘違いをしていて、いたたましい*1。
1. 金融システムレポートの読み落とし
まずは以下の部分。
昨年10月の日銀の金融システムレポートでは、長期金利が1%ポイント上昇した場合のリスクを「大手行で3.7 兆円、地域銀行で3.0 兆円、信用金庫で1.6 兆円」つまり合計8.3兆円と試算していたが、なぜか今年4月のレポートからは数字が消え、「金利リスクは増大傾向にある」とだけ書かれている。
2012年10月のレポートの合計8.3兆円の当該部分(P.55)は「国内債券投資の金利リスク量」であって、「全年限の金利が同時に1%pt上昇する場合」だから、長期金利だけの話では無い。
2013年4月のレポートでは「(4)金利上昇シナリオ」(P.60)の「図表Ⅴ-1-10 金利上昇に伴う債券時価の変動」のパラレルシフト部分が、2012年10月の金利リスクに該当する。だから、金利リスクの数字は消えてはいない。
ここだけ銀行種類がBIS基準で分けてあるので分かりづらいが、3.2+3.4=6.6兆円のリスクとなるようだ。このぐらいなら大半の銀行の経営に支障は出ない。
なおバーゼルⅢでは国内基準行は債券は時価会計ではないし、都銀などの国際統一基準行は保有株式も多いので、金利上昇が単純に銀行の収益を決定すると言うものではない。景気回復に伴う金利上昇ならば、何も問題は無いようだ。
2. 消費税率引き上げで名目金利上昇?
もう一つ池田氏の主張に問題があった。
消費増税とインフレ目標が重なった場合には、金利が3%ポイント上昇することは十分ありうる
消費税率の引き上げはフィッシャー方程式の外側にある。1997年の消費税率引き上げ前後でも、別に金利は上昇していない*2。貨幣的現象のインフレであれば、事業収益もインフレするので名目金利が上昇するわけだが、消費税率の引き上げでは事業収益は上昇しないので名目金利は上昇しないと言うことであろう。
*1勘違いは良くあることなので、特段、責める内容でも無いが。
*2「日本の長期金利は1990年の8%台から低下基調に」に長期金利の推移のグラフがある。
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