銀座のレストランtrattoria GANZOに予約を入れていたものの、オーナー・シェフに当日に車椅子だと知らされても対応ができないと言われて入店を拒否されたと、作家の乙武洋匡氏が嘆いていた(Twitter)。店舗側の謝罪で決着したのだが、色々な人の興味関心を惹いた様だ。
欧米と比較して日本のバリア・フリー化の遅れを嘆く声*1と同時に、理屈抜きで車椅子ユーザーへの軽蔑的な態度が見られると批判している福祉の専門家らしい人がいた。しかし、今回の「差別」は態度の問題なのであろうか?
1. レストランが車椅子にすぐに対応できるかは疑問がある
二階の店舗まで狭い階段と廊下を、総重量130Kgと見られている電動車椅子と乙武氏を運ぶには、大人4人が必要になるそうだ。繁忙時にオーナー・シェフ他の従業員3名しかいない店舗だと不可能に思える。
乙武氏は体だけ運ぶように要請したらしい*2が、一階の廊下のスペース*3などを勘案するに、それだと電動椅子が路上に残される。銀座界隈のルールが分からないのだが、電動椅子を路上駐車していて問題は無いのであろうか。自転車置き場などが近くにあればいいのだろうが。
福祉の専門家は店舗や廊下や階段の写真を見て、「余裕」「物理的に対応可能」「電動車いす(まじ重いです)を上まで運ぶことだなんて思ってないでしょう」と断言していたが、電動椅子を路上駐車していて問題が無いのかについては、交通法の専門家に聞いてくださいと言う事だった。連絡されたら店側は対応可能と言う事だから、その場でも対応可能であったはずだと言う論理のようだ*4。
状況からするとレストランだけで対応が難しいので、他の誰かのサポートが必要そうに思えるのだが。
2. 価値規範的な話だが、その価値規範は説明できない
結局、その福祉の専門家は価値規範的な話をしているのだと言い出したので、実現可能かどうかは関心が低いようであった。だから店側の事情を配慮すべきだとか、実現可能性があるのかと言う疑問は、全て「ピンボケ」と切り捨てられるわけであろう。
しかも、その価値規範的な話は「経験的・直感的」に理解されるものであって、一般に理解できるものでは無いらしい。要約すると介護分野の議論では、実現不可能な事でも実現しなければ差別だし、その根拠を大衆が理解する事はできないので、黙って言う事を聞けと言う事のようだ。
これって昔のマル経や中核派の議論であって、自分の無謬性を盲信していないと言えない。本音を言うと、物理的に対応できない小規模店舗はこの世から無くなれと思っているのかも知れない。社会的弱者に配慮する姿勢を見せつつも、傲慢な態度を隠しきれていなかったりするように感じる。
*1ロンドンの地下鉄はエレベーターが少ないので、車椅子の人々を排除していると言う指摘も見かけた。
*2緊急避難を考えると、同伴者だけで乙武氏を抱えて移動できない場合は、店側は対応すべきではないと言う意見もあった。
*3「乙武氏ツイートの銀座の店に行き、店主に取材しました」に階段などの写真がある。
*4店側の対応方法が明かされていないわけだが、近所の店舗などに協力を要請したりするのかも知れないし、この議論は強引に思える。
3 コメント:
車いすは仕方ないが路駐する予定だったってブログに書いありましたよ。
そもそも乙武さんが怒ったのは店側の態度の問題でしょ。
>お店はビルの2階。エレベーターはあるが、2階には止まらない仕組みだという。「それはホームページにも書いてあるんだけどね」――ぶっきらぼうに言う店主。「ちょっと下まで降りてきて、抱えていただくことは…」「忙しいから無理」「……」「これがうちのスタイルなんでね」以上、銀座での屈辱
ツイッターからの引用です。
「これがうちのスタイルなんでね」とか言われたら誰だってカチンと来ますよね。
>>芋 さん
コメントありがとうございます。
店側のその日の態度に問題があったようですね。
しかし、このエントリーは現実的な制約を考えたり、理想に理屈付けをする必要があるのでは無いかと言う話であって、両者の非を議論するためのものでは無いです。
一応は決着の付いた問題のようですが(私は思ってませんが)
気になったのでコメコメ
店主の態度云々は多く言われてましたが
これは障害者への差別としてだったら勿論宜しくないと思います。
しかし仕方がないから、車椅子を路駐して自分だけ中へ担ぎ入れて~と言う客への態度だったら至極真っ当だと思うんです。
私は上空写真を見ただけですが路駐して邪魔にならないほど広々とした場所には思えませんでし、たから店主が傲慢な客だと思っても不思議ではないと思いました。(一階はドトールらしい)
あと乙武氏は有名人であり特殊な電動車椅子の中でもさらに特殊な形状をしている椅子を利用していると認識しています…それを所謂隠れ家レストラン付近に路駐は無いかな~と(一階はドトールらしいですし)
店主さん側の言い分だとこんな言い方や文言は違うとし終始敬語で対応と言ってましたし、予約して行った店の情報を軽視する「お客様」にサービスが簡素なものになるのも良くある話でそれほど不思議ではない
無謬性については福祉の専門家さんから強く感じました
と言うかこの方の言っている事は強烈な逆差別だとも感じましたし邪まなトリックが色々あるんだろうな・・とも
社会的弱者…を武器にして出版物で大きな経済的力も人脈もコネも得ているであろう乙武氏
ひっそりとオープンさせた隠れ家レストランで割安で料理を提供するシェフ(人件費の関係で店員は2人?)
私には武士階級の強者が自分より弱いと思った相手に下品な笑みを湛えて手下をけしかける…そんな時代劇のワンシーンを連想してしまった話でした
長々と乱文失礼しました
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