4月3日の産業競争力会議で竹中平蔵慶大教授が上下水道の民営化を推奨したかのように報道されている(朝日新聞)。まだ議事録が出ておらず、上下水道を含む公的資産が、運営権の売却対象の公的資産と一致しているのかが分からないのだが、上下水道を売却したらどうなるか考えてみたい。
水道のような先行投資が大きくなるサービスは、政府が運営していることが多い。ただし、一部の途上国では民間資本で開発されているケースもあり*1、実は19世紀の英国では数多くの民間企業が上下水道サービスを営んでいた。しかし、上水道は衛生面や供給量で問題が多くあり、下水道は河川の汚染がひどく、20世紀初頭から地方自治体が上水道サービスを提供するようになった(イングランドとウェールズの水道)。
上水道の衛生面や供給量の問題は、多くの上下水道会社が存在したとしても、個々のサービスエリアでは独占企業になりやすい事から来る問題であろう。独占利潤の一形態と見なせる。河川の汚染は、汚水を垂れ流すと浄化費用を節約して価格競争力で優位に立てるので、競争の結果、汚水処理されなくなり河川汚染を発生させる共有地の悲劇*2が問題だと説明する事ができるであろう。つまり、上下水道サービスで市場の失敗は発生する。
民営化の弊害は規制によって抑えることは可能かも知れないが、そうすると地方自治体が運営しているのと状況が変わらなくなる。20世紀初頭に公営化された英国の上下水道サービスは、1980年代のサッチャー政権時代に民営化されたが、他国と比較して特に水道料金が安いわけでも、品質が良いわけでもない。為替レートの関係もあるのだが、日本と比較すると価格が高く、品質が低いサービスになっているようだ。
上下水道の民営化をするとどうなるか? ─ 公営から規制産業になるだけで、料金も品質も変化が無い。上下水道の民間運営は規制緩和の目玉になりそうな雰囲気もあるのだが、実態としては多くは期待できないように思える。
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