2013年4月25日木曜日

朝鮮学校のおかげであなたが利益を得ていることは確実 by 金明秀

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社会心理学者の高史明氏に、関西学院大学の金明秀教授のツイートの一部を取り上げるのはアンフェアだと指摘されたので、金明秀氏の意見に賛同していると思われる人のマトメを見たら、タイトルのような発言があった。朝鮮学校を無償化、正確には就学支援金に対象にすべきかの議論で、エジプト人タレントのフィフィ氏の事実認識と、金明秀氏らしい朝鮮学校擁護になっている。

1. 他の主張と同時に誤りを訂正しようとしている

フィフィ氏の事実認識の誤りは、インターナショナル・スクール等の外国人学校は高校無償化の対象にならないと言う点で、金明秀氏がそれが間違いだと言う指摘は正当性がある*1。しかし、指摘方法が直接的ではなく、余計な議論に拡張している。例えば以下を見て欲しい。

四つ問題がある。

  1. 「朝鮮学校がこれまでに訴えてきたおかげで」外国人学校が高校無償化の対象になったかどうかは、朝鮮学校を高校無償化の対象にすべきか否かの議論に関係ない。
  2. フィフィ氏が就学支援金の支給で、子どもを通じて個人的な利益を得ているか否かは議論に関係ない。学校に支給されるから、保護者にとっては認識も薄く、混乱を招く。
  3. 「差別政策によってその就学支援金の支給から除外されている」のかは分からない。差別的であるか否かを議論しているわけで、差別政策と断定することは結論を先取りしている
  4. 金明秀氏の議論でも、フィフィ氏の子供が通う外国人学校と朝鮮学校は、恐らく同列に扱うことができない*2

「インターナショナルスクールも就学支援金の対象内」と言えばいいだけなのに、朝鮮学校の功績を称え、朝鮮学校への差別を糾弾しようとして、おかしい事になっている。これも民族的自尊心の向上を心がけているためであろうか(関連記事:ある計量社会学者が他人を罵倒する理由)。

2. 子供の話では、金明秀氏はフィフィ氏を脅していない

唐突に子供の話を持ち出されたので、一部の人はフィフィ氏が脅されたように感じたようだが、金明秀氏の主張は、[朝鮮学校関係者の運動 → 外国人学校が得をした → フィフィ氏の子供は外国人学校に通っている → フィフィ氏は得をしている]と言うものなので、脅す意図はあるようには読めない。

「以後は手加減しないよ」の方が、実の所は脅しに近い印象を受ける。「あなたに言うべきことをあらゆるチャンネルで発言していくという意味」だそうだが、あらゆると言えば右翼の街宣車的な行動だって入るわけだし、普通のメディアを通じた反論ならば、最初から手加減はいらない。

3. 金明秀氏も認める外国人学校でもない朝鮮学校の異質性

朝鮮学校を無償化の是非と、インターナショナルスクールの取り扱いは、実はあまり関係ない。文科省の区分けでは、朝鮮学校は「出身国の教育制度」があるわけでもなく、「文科省が指定した国際的教育評価団体から学校として認可」されてもいないからだ。

金明秀氏の『朝鮮学校は「北朝鮮の学校」というより、北朝鮮に愛着とつながりを持ちつつ日本社会に根づいた「在日コリアンの学校」』と言う表現は、概ね妥当で問題点を的確に示している*3。朝鮮総連がコントロールしていると思われる点、犯罪国家の北朝鮮に愛着とつながりを育んでいる点が軋轢を生んでいるわけだ。

拉致問題、大韓航空機爆破事件、超精密偽100ドル札偽造(スーパーノート)、覚せい剤密輸事件、韓国哨戒艦「天安」撃沈事件、延坪島砲撃事件、核兵器開発問題、暗殺事件(ラングーン事件、朴相学暗殺未遂事件)などを引き起こしている武力集団である北朝鮮と、どうやって付き合って行くかが問題とされている。そこに愛着とつながりがある機関をどう扱うべきか?

「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)」の第13条では、教育機関の認定に「教育が国によって定められる最低限度の基準に適合することを条件」とする事は否定されていない。ゆえに教育内容を元に、朝鮮学校を教育機関ではなく、北朝鮮の出先機関と位置づけることは可能なはずだ。

私費で在日韓国・朝鮮人が朝鮮学校に通うことは止められないが、朝鮮学校を無償化対象外とする事は、法的にも可能なように思われる。

*1文部科学省「高等学校等就学支援金制度の対象として指定した外国人学校等の一覧」を見れば一目瞭然である。

*2金明秀氏のFAQを見ると、外国人学校が(イ)(ロ)(ハ)に分類されており、朝鮮学校は「出身国の教育制度」があるわけでもなく、「文科省が指定した国際的教育評価団体から学校として認可」されてもいない、文部科学大臣が指定した(ハ)になる。文科省の裁量が大きく働くカテゴリーに入る。(ロ)の外国人学校と(ハ)の朝鮮学校は同列ではないわけだ。そして、フィフィ氏の子供が通う学校が、(ハ)に入るかは不明である。

*3外国人学校は生徒が本国に帰国する事を前提にした学校であるが、朝鮮学校は生徒が本国に帰国する事がほとんど無い。第二次世界大戦末期から朝鮮戦争までの朝鮮半島の混乱の中で、大量の朝鮮人が政治・経済難民として日本に定着したわけだが、当時は朝鮮半島に帰国する事を想定していたので、朝鮮語などの教育が必要と考えられていたのだと思われるが、韓国も北朝鮮も教育制度などが定まっておらず、北朝鮮の思想教育の影響を強く受けつつも、独自の発展を遂げたように思える。

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