2011年12月22日木曜日

ある計量社会学者が他人を罵倒する理由

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関西学院大学社会学部教授の金明秀氏のブログやTwitterにおける主張には違和感を感じる事が多い。主張が明快ではなく、かつ主張の裏づけになるデータや論文をほとんど示さないからだ。そして日本人の在日韓国・朝鮮人、韓国、北朝鮮に対する見解や批判を、感情的に批判する。何故であろうか?

金明秀氏の言説の不透明感は、在日韓国・朝鮮人の民族的劣等感を問題にしていると考えた方が良さそうだ。なぜならば民族的劣等感の解消を訴えているからである。このため理由に関わりなく、祖国(北朝鮮/韓国)が批判されれば民族的劣等感が増すので、それを否定しないといけない。そう考えると、不明瞭な金明秀氏のインターネット上での主張は一貫したものだと思えてくる。

1. 金明秀氏の研究では差別の存在が未確認

差別問題で金明秀氏はよく論戦を繰り広げているが、意外に差別の立証を重点的に研究しているようではないようだ。

金明秀氏のInternational Journal of Japanese Sociologyに掲載された論文では日本人と在日韓国人の間に有意な社会的な差が無いと指摘している。「年報人間科学」掲載論文でも、過去に職業差別があった一方で、現在では教育水準に差はなく、日本企業への就職が増加していることを指摘している。引用やデータ提示無しで「在日韓国・朝鮮人青年たちに門戸を閉ざした日本企業は、依然としてあとを絶たない」と記述し、「分析者である私(金明秀)自身、身近に就職差別を受けたという親族、知人・友人に、いまだこと欠かない状況がある」と述懐しているが、これらは統計的に差別の存在を確認したことにならない。

福岡安則氏との共著である『講座・差別の社会学2 日本社会の差別構造』に収録された論文「在日韓国・朝鮮人のアイデンティティと差別構造」の前半部分で、金明秀氏は幾つかの差別と民族的劣等感の実例を示している。しかし、差別体験の内情については、求職時の逸話以外はほとんど触れていない。

計量分析が仮説に対する検定を行っていないため、他分野から見ると差別の存在が無いだけではなく計量手法が稚拙な可能性も否定できないが、金明秀氏の研究では統計的に差別を立証できていないのは確かだ。金明秀氏が愛用する「告発の無効化」をされる以前に、告発になっていない。

追記(2013/04/15 23:55):「具体的な行為レベルの差別の体験以上に、周囲の日本人の態度レベルの差別感を意識させられる度合いのほうが高い」(『講座・差別の社会学2 日本社会の差別構造』P.38脚注5)とある。

2. 被差別意識と民族的劣等感に関する研究

金明秀氏は統計的に見えない差別と直面して、民族的劣等感の解消に関心を移したのかも知れない。研究も被差別意識や民族意識(金明秀氏の言葉でエスニシティ)に移っている。

「解放社会学研究」掲載論文では、共分散構造分析(SEM)を駆使して、日本人と比較した社会的・経済的な劣位だと言う意識である「相対的剥奪感」と在日韓国・朝鮮人である自分への嫌悪感である「民族的劣等感」を分析している。被差別体験が相対的剥奪感や民族的劣等感に統計的に有意な影響がある一方で、その効果は大きく無いそうだ。また相対的剥奪感や民族的劣等感が金明秀氏の意味でのエスニシティ(「ソシオロジ」掲載論文)に与える影響も大きくは無い。また、民族教育には民族的劣等感を解消し、「主体志向的エスニシティ」の確立に大きな影響を与える。

ここで注意したい点があり、前述の「在日韓国・朝鮮人のアイデンティティと差別構造」では被差別体験者よりも、民族的劣等感を感じる人が多い事が指摘されている。論文では指摘されていないが、大きく減少傾向にある被差別体験よりも民族的劣等感の方が問題なのかも知れない。

追記(2011/12/27 23:10):金明秀氏のTwitterでのつぶやきを見る限り、民族的劣等感を重視する姿勢は、氏の個人的な問題に起因するのかも知れない。

追記(2013/04/15 23:55):民族教育には民族的劣等感を解消すると言う主張は、「同程度に被差別体験をもつ場合でも,家庭内で民族的な文化と接触しつつ成育したり,民族教育を受ける機会に恵まれているほど,アイデンティティに打撃を被る度合は少なくてすむ」(金(1996))から読み取れる。

3. 金明秀氏の言説は民族的劣等感の解消を目的としている

論点や主張の根拠が分からない金明秀氏の言説は、民族的劣等感の解消だけを目的としていると考えると、とても整合的に思えてくる。

金明秀氏が片山さつき氏をブログで批判したときに、片山さつき氏の主張にほとんど反論しなかった。単語のミスをあげつらっているだけだ。片山さつき氏の主張に重大な事実誤認や論理矛盾があればそれを批判するはずだから、金明秀氏は大筋には反論できない事が分かる。

金正日の死に関連した反応を見たときも、金明秀氏は「隣国の王を「独裁者」と規定して自国がそうでないと思いこもうとする愚か者」と、北朝鮮は独裁国家ではなく、日本も独裁国家だと主張することで北朝鮮を擁護している。後で『ぼくはあの人が「独裁者」でないとは言っていません』と弁解しているが、「独裁者」と規定したら愚か者なのだから、「独裁者」ではないと言っているようなものだ(関連記事:北朝鮮の金正日の死を悼めるか?金明秀の北朝鮮擁護を考える)。

事件があれば児童などへの取材もある日本において、朝鮮学校への取材を「隣国に愛着を持つ子どもたちを低劣な愉悦の道具にしようとする愚か者」と批判するのも、在日朝鮮人の子どもに民族的劣等感を与える可能性を危惧していると考えれば納得がいく。過去の北朝鮮の無法行為に対して、コメントを求める可能性があるからだ。

在日韓国・朝鮮人の参政権問題でも、日本人が金明秀氏の功績を認めた上で、現行制度の不適切さを認識して制度改正を行い、金明秀氏に選挙権を与えろと主張している。日本人が意思決定すべきと言いつつ、日本人の宮台氏が意見を述べた事に対して「マジョリティの知識人が、マイノリティの生き方に口を挟む暴力」と矛盾した主張も展開している(関連記事:在日朝鮮人の帰化申請は難しい?)。

金明秀氏は朝鮮民族の不名誉になる指摘は事実関係に関わらず批判しており、さらに朝鮮民族への尊敬と敬意を無条件に求めているようだ。民族的劣等感の克服が目的なので、事実関係の整理や説明に関心が無いと考えると納得がいく。

4. 民族的劣等感の解消を日本人に求めるのは無理がある

金明秀氏のこうした主張は、差別が問題だと認識しているが被差別意識は在日韓国・朝鮮人の問題だと思っている日本人には理解できない。当然、氏は反発を受ける。しかし民族的劣等感の解消のために優遇しろとは主張できない。

しかも金明秀氏にとって厄介な事に、近年の在日韓国・朝鮮人の祖国は、日本人から見て多くの問題を抱えている。拉致問題、大韓航空機爆破事件、超精密偽100ドル札偽造(スーパーノート)、覚せい剤密輸事件、韓国哨戒艦「天安」撃沈事件、延坪島砲撃事件、核兵器開発問題、暗殺事件(ラングーン事件、朴相学暗殺未遂事件)などで、北朝鮮やその首謀者は批判点が多い。竹島問題や慰安婦問題などもあり、韓国を日本人が批判するのも当然に思える。

しかし、こうした在日韓国・朝鮮人の祖国が引き起こす事件に対する日本人の素朴な反応が、民族的劣等感と被差別意識を高める事になる。金明秀氏は民族的劣等感を解消を目標としているわけで、日本人の韓国・北朝鮮批判が妥当なものでもそれを封殺したい欲求に駆られるようだ。だから不明瞭な主張を繰り返し、最後は苛立ちの余り「バカ」「レイシスト」「愚か者」を連発するのであろう。

5. ナショナル・アイデンティティと排外主義の専門家?

罵倒で相手を説得することはできない。そこで金明秀氏は自身はナショナル・アイデンティティと排外主義の専門家だと宣言する事で威圧しようとしているようだ。

金明秀氏の業績リストを見ると、確かに2011年9月に日本社会学会で「日本国民のナショナル・アイデンティティと排外主義の構造と規定要因に関する計量社会学的な検討」を報告している。しかし、排外主義について研究しているようだが、関連した刊行論文が見当たらないのでフォーマルな主張は分からない。日本人の韓国・北朝鮮批判をヘイトスピーチと規定して、それをナショナル・アイデンティティの維持のためだとか言っている気もしなくもないが、学会報告を聞いた人しか真相が分からない。

なお研究途上なのか、用語定義には甘いところがあるようだ([これはひどい]それは「黒い羊効果」でも「他者化」でもありません、@ han_org(金明秀)さん)。

6. 尊敬ではなく蔑視を招く態度

朝鮮民族の文化は知らないが、日本では主張を丁寧に説明する人物が好まれるものだ。また他人を罵倒する人物は嫌われる。そういう意味では、在日韓国・朝鮮人の中で著名な金明秀氏の「バカ」「レイシスト」「愚か者」を連発し、反論を見かけるとそれがヘイト・スピーチだと主張し、最後は社会学の専門家だから自分が正しいと言い張る態度は好まれないと思われる。はっきり言って、尊敬ではなく蔑視を招く態度だ。

ただし金明秀氏は安心をしていていい。金明秀氏以外の多くの在日韓国・朝鮮人はそのような態度はとっていないので、何だかんだ言っても徐々に日本人の尊敬を勝ち取っている。既に帰化してしまったが、在日三世の孫正義氏を尊敬する若者は少なくない。金明秀氏は民族的劣等感の克服に貢献できなくても、他の在日韓国・朝鮮人がそれを実現できるかも知れない。

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