2011年12月21日水曜日

在日朝鮮人の帰化申請は難しい?

このエントリーをはてなブックマークに追加
Clip to Evernote
Pocket

一年以上も前だが、宮台真司氏と金明秀氏が在日朝鮮人の帰化が難しいかで議論をしている(togetter)。宮台氏が外国人参政権に対して反対で、参政権は日本国籍を持つ人のみに限るように主張している記事に関連し、金明秀氏が傲慢だと批判しているのだが、話の筋が分かりづらい。

宮台氏は ─ 現在の政策的議論の上では ─ 外国人参政権反対者で、金明秀氏は外国人参政権賛成者だ。金氏は外国人参政権への賛否を明確にはしていないが、「外国人だから仕方ないなんて、20世紀の話だグローバリゼーションの進んだ現代では、それじゃつじつまが合わなくなってきて」ると指摘している。金明秀氏の感情的な言説に違和感を感じたので、議論の焦点を整理してみた。

1. 在日が参政権を目的に帰化を行うのは不可能な事?

議論の焦点は在日朝鮮人(つまり特別永住者)の参政権付与の妥当性についてだ。金明秀氏はブログのエントリーで歴史的問題から議論をしているが、その主張をまとめると特別永住者は日本国籍を取得するのが難しく、参政権を目的に帰化を行えと言うのは、不可能な事をしろと言うので傲慢だと言う事のようだ。つまり、何代にも渡り日本に定住している特別永住者が帰化可能か否かが問題になる。

2. 国籍法と統計は容易である事を示唆している

法的要件で在日の帰化が難しいとは思えない。国籍法の第五条の居住年数や生活基盤などの帰化条件を満たさない在日朝鮮人は極めて少数であろう。実際に、2001年から2010年までの10年間で、毎年平均で14,906人が帰化申請を行い、14,871人(99.8%)が認められた。このうち60.9%が韓国・朝鮮籍である。10年間で9万人の韓国・朝鮮系日本人が誕生している。ただし、韓国・朝鮮籍の帰化人数は2003年の11,778人をピークに減少を続け、2010年は6,668人にとどまっている(法務省)。

3. 法律ではなく家庭の問題で難しい?

宮台氏は、韓国系日本人の鄭大均首都大学東京教授の「一般永住者に比べれば特別永住者の帰化は極めて容易ですよ。現に自分の場合そうでしたから」と言う言葉を引用し、金明秀氏は『ぼくには日本国籍を取得した在日コリアンの知人もいるが、「容易だ」などという人にはお目にかかったことがない』と主張している。水掛け論に見えるが、容易で無いのは法的要件なのであろうかと疑問が沸く。サッカーの李忠成選手は帰化するときに、親戚から猛反対され迷ったと語っている。

4. 日本人が意思決定すべきで、日本人は口を挟むべきではない?

法的に在日朝鮮人の帰化が容易だとすれば、現在でも在日朝鮮人が参政権を持つ機会はあると言う宮台氏の主張は一定の説得力を持つ。金明秀氏も『在日コリアンに地方参政権の門戸を開くかどうかというのは《日本人の問題》』と日本人が意思決定すべきだと主張しているので、宮台氏が論陣を張るのはおかしいことではない。

金明秀氏が何に憤りを感じているのかを理解するのは難しい。金明秀氏は宮台氏を傲慢だと主張する弁の中で、『「参政権を求めるのであれば国籍を変えていただきたい」などと、マジョリティの知識人が、マイノリティの生き方に口を挟む暴力』と主張しているが、マイノリティ(在日朝鮮人)に参政権を与えるかはマジョリティ(日本人)が意思決定しろと主張しているのと明らかに相反する。

5.「敬意」と選挙権を求める屈折した要求

こうやって見ると、金明秀氏の主張は論理破綻に思えるが、恐らく背景には屈折した要求があるのであろう。金明秀氏の別のエントリーから引用する。

日本国籍を持つ地域の友人・知人たちが、「同じ町の居住者である金君に選挙権がないというのはぜったいにヘンだよ。ずっとこの市に住んできたし、町内会の仕事もやってくれている。道路問題では行政との交渉で汗もかいてくれたじゃないか。人権講演会の講師も勤めてくれた。これだけ住民として貢献しておいて、政治的権利がないというのは、おかしいじゃないか。こんな歪んだ状況は隣人として許せない」と言ってくれるのであれば、選挙権を獲得した上で、地域の一員としての責務を今まで以上に全うしたいと思う。

回りくどい表現だが、日本人が金明秀氏の功績を認めた上で、現行制度の不適切さを認識して制度改正を行い、金明秀氏に選挙権を与えろと主張している。つまり、金明秀氏は外国人参政権を要求する一方で、氏(と同胞?)に対する敬意も要求しているわけだ。マイノリティーへの敬意が不足していると主張していると言っても良いかも知れない。

6. 参政権は「敬意」の問題なのか?

参政権は行政や法令に影響を与える権利だ。マイノリティーの代表者は多数決になれば不利になるので無駄な気もするが、国会で公明党などの少数政党が一定の役割を果たしている事からも、マイノリティーの権利を保護する機能も持ちうる。そういう意味では、抑圧されたマイノリティにとって大切な権利だと考える事ができる。

人種差別でも男女差別でも社会的に抑圧されたマイノリティを考える場合は、制度や慣行によって被る社会的・経済的な差別が問題になると思っていたのだが、金明秀氏はマイノリティーへの敬意や尊敬を問題にしているようだ。差別用語を使う人物が好ましくないのは分かるが、だからと言って公民権が小さい問題だと言うわけではない。

こうやって見ていくと金明秀氏の主張は、マイノリティーの権利問題なのか、周囲から尊敬を得たい金明秀氏の願望なのかが分からなくなってくる。マイノリティーの権利問題と考えれば、朝鮮学校出身者には理解できないのかも知れないが、参政権は小さく無い問題だ。氏の個人的な願望の問題なのであれば、社会問題を議論するフリをするのではなく、周囲に尊敬されるような振る舞いを心がける方が効果的であろう。すぐに「バカ」「レイシスト」「愚か者」を連発し、気に入らない反論を見かけるとそれがヘイト・スピーチだと主張し、最後は社会学の専門家だから自分が正しいと言い張る人物が、日本社会で尊敬を勝ち得るようには思えない。

0 コメント:

コメントを投稿