2013年3月9日土曜日

米国が不況でもデフレが続かなかった理由

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ノーベル賞経済学者のクルッグマンが、当初の自身の予想が間違っていたことを認めた上で、長期間の不況にも関わらず米国経済でデフレが続かなかった理由として、不況が大した事が無いのでデフレにならなかったと言う説を否定しつつ、賃金の下方硬直性を挙げている(NYT)。

不況が大抵のケースでデフレをもたらさないのは確かだ。下のIMFから転載されている図は、縦軸が年率調整をした不況前後のインフレ率の変化で、横軸が不況前のインフレ率だが、高インフレ国ほど不況でインフレ率が低下するが、マイナスにはなっていない。例えばAUS 91-93の場合、7%ぐらいのインフレ率が-2ポイント低下するに留まっている。

実際に賃金の下方硬直性があると言う根拠として、Daly, Hobijn and Lucking(2012)の図表を二つ参照している。

Figure 2は、2011年の時間あたりの賃金の1年間の変化率の分布で、ゼロと全く動いていないケースが多い。

Figure 3は、時間あたりの賃金の1年間の変化率がゼロだった率の時系列変化を表したものだが、不況になると上昇する傾向を示している。なおHourlyが時給で働いている人々、Nonhourlyがそうでない人々の値だ。

なおクルッグマンはデフレーションに弊害が無いとは言っていない。また、吉川(2013)のように雇用を守るために日本の労働者が賃金引下げを受け入れたと説明する*1と、デフレが進んでいた時期(1999年~2005年)の前後の失業率の上昇を上手く説明する事ができないのが気になる所だ。

*1余談になるが、経済評論家の池田信夫氏が「吉川氏のモデルでは名目賃金は内生変数ではない」と主張していたが、吉川氏のモデルでも「f:賃金決定メカニズム, 不況 → 名目賃金」になるので、名目賃金は内生変数になる。なお吉川氏の議論では、新興国との競争激化や需要喚起型イノベーション不足が不況の原因となっている(関連記事:デフレの原因は名目賃金の低下である? ─ 内生変数では?)。

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