2013年3月7日木曜日

経済学で良くある算数と原発再稼動問題

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経済学では人間はリスクを嫌うと言う、ごく普通の前提条件から数理モデルを作ることが多い。また、便宜的に効用関数を最大化するように振舞うと定義することが多く、危険回避的な効用関数にはフォン=ノイマン・モルゲンシュテルン効用関数と言う名前がついている。その中でも絶対的危険回避度一定の効用関数は、計算がしやすいと言う特性があるので良く用いられてきた。

さて、この効用関数で原発問題を政治的に考えていると、世論調査の仕方が間違っているような気がしてくる。原発の賛否を聞くべきでは無く、人々の危険回避度を掴むような質問をするべきなのでは無いであろうか。

1. 算数の問題を解いてみる

絶対的危険回避度一定の効用関数を特性を整理してみよう。

wが富、eは指数、ρが絶対的危険回避度、U(w)が効用関数となる。この効用関数が便利なのはwが確率変数のときに、その平均μと分散σ2に値を展開できることだ。

wが標準正規分布N(μ,ρ)に従うとすると、その期待値は以下のように表すことができる。

U(w)を展開してせっせと計算する。

以下は、平均μ-ρσ2、分散σ2の正規分布の累積分布関数だから1に等しい。

整理すると効用で測ったwの価値は、そのリスクσ2に応じて減少する事が分かる。

安全資産とリスク資産の価格差や、リスク中立的(ρ≒0)な投資家とリスク回避的な企業家(ρ>0)の関係や、異時点間の消費の変化もリスクと捉え、消費平準化が好ましいことの説明などに使われる。

この極度に簡便化された一つの効用関数は、経済学が想定する典型的な人間の二つの評価基準を示している。一つは経済的である事で、コストが低くuが大きくなる方が望ましい。一つはリスクが低い事で、σ2が小さい方が望ましい。

2. リスク回避度は人それぞれ

原発再稼動問題を考えよう。この算数から何が分かるかと言うと、標準的な経済学では、正確なuσ2が分かったとして原発の賛否、つまり他のエネルギー源に対する優劣は、個々の人間のρに依存することになる。ρに多様性がある以上、どう転んでも賛否は出るわけだ。

3. 多数決で代表的リスク回避度を決定できる

ここで政策決定を、あるリスク回避度ρgを選び、ρgが入った効用関数を元に原発再稼動の是非を決定するとする。個人は自身のρとρgの差が大きいほど、政策に不満を持つ事になるので単峰型選好を持つ事になる。すると二大政党制が前提になるが、中位投票者定理により、日本中の人をρの順番で並べて中央にいる人のρをρgとするのが多数派意見と言う事になる。

4. 人々のリスク回避度を調査してみたい

数字として自分のリスク回避度ρを申告できる人はいないであろうが、月額の電気代などの経済的便益と過酷事故発生確率と被害規模を幾つも並べてみて、どの辺りを選ぶのか調査を行う事でρを調べることができる。

認知バイアスなどが入るので信憑性はいまひとつかも知れないが、単純な賛否を問う世論調査とは違った側面の情報を求めても良いのでは無いであろうか。有権者の反発が最も少ないエネルギー政策を選択できるようになるわけで、政治的には決定的な情報のはずだ。

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