2012年3月19日月曜日

周波数オークションと利用料金

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周波数オークションの導入が閣議決定された事から、携帯電話の利用料が高くなる恐れがあると言う声に、コメント欄で「この電波オークションの資金はいわゆるサンクコストであって利用料金に反映することは不可能」と堂々と主張している人がいた。

経済学者や経済評論家でそのように言う人もいるのだが、実際に利用料金が上がる上がらないは別にして、恐らくこれは適切ではない(ガジェット速報)。

1. 免許代はサンクコストになるのか?

落札者が資金調達を行わないで免許を落札したら、それが1兆円でも10兆円でもサンクコストだ。しかし企業は、全ての運転資金を資本もしくは負債と言う形で資金調達している。免許代は金利負担を増やし、金利負担は固定費用となる。

固定費用は長期の限界費用を引き上げるため、長期の供給曲線を上方シフトする事になる。つまり、例外的なケースを考えない限りは、免許代は利用料金を引き上げる。これは完全競争市場でも、(理論的な)寡占市場でも変わらない。

2. 免許代をサンクコストにできるケース

最初の時点でオークションで支払った金額は永久に戻って来ないのに、限界費用になると言うので狸に騙された気がする人もいるようだ。ミクロ経済学の教科書的には、どう考えてもサンクコストになるはずなのに!

サンクコストにできるケースもある。倒産して会社更生法を適用し、資本と負債を整理してしまえばいい。実際に航空業界などでは頻繁に倒産が発生し、金利負担が軽くなった破綻会社(e.g. JAL)がさらに価格競争を仕掛けて、競合他社(e.g. ANA)の経営を悪化させる現象が起きている。

3. 免許代が高額になれば、参入者が減って料金が引きあがる

債権者や出資者から見ると、上述のような状況は全く利益にならないので、このような投資は避けようとする。ケータイ会社は会社更生法の適用を覚悟して参入はしないし、そうでなくても株式価値の低下をもたらす参入はしない。免許代が高額になる場合は、参入者は減る。参入者が減ると完全競争の場合でも、限界費用は増加するのでケータイ料金は引きあがる。

「100兆円で落札しても、ケータイ料金は同じで済むんや!(`・ω・´)キリッ」とか言っている人は、全てのケータイ会社が採算見込みを無視して市場に参加し、金利負担に耐えられず会社更生法を適用する事を主張しているのだが、それに気付いているのであろうか。

え?一度落札したらサンクコストになって撤退できないって? ─ まだ入札も行われていません。

4. 周波数オークションは利用料金を引き上げるか?

免許代はサンクコストになるから、利用料金に関係ないと言うのは、上記の理由で間違いであろう。しかし、周波数オークションが利用料金を引き上げるかは分からない。理由は二つある。

  1. まだ免許で排他的独占権が得られるかが分からない。独占利潤が見込めなければ、免許代も高騰しないであろうし、利用料金の引き上げもできない。
  2. (官製)寡占市場である日本のケータイ電話料金が、利潤最大化行動の結果として決まっていない可能性がある。総務省は主要三社でシェアを分け合うように誘導して来ており、また世界的にも日本のケータイ会社は高収益だ。

(2)に関しての政策的な意味は重大で、ミクロ経済学の理論的な前提を吹き飛ばしている。価格を政府が決めていたら、固定費用の増加があっても価格が動くわけがない。逆に言うと現状のケータイ料金にあわせて、オークションの入札金額が決まる事になる。つまり、周波数オークションで利用料金が上がる事はない。ケータイ電話会社の利益を政府に還元するだけだ。

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