一時、ソロス・チャートと言うのがあって、日米のマネタリーベースの比で為替レートが説明できると言う主張があったが、分析期間を長く取ると当てはまりが悪いので、今では信じられていない。
ところが修正ソロスチャートと言うのが出てきて、マネタリーベースから中央銀行当座預金を引いた現金+法定準備額の日米比が為替レートを良く説明すると言われている。ドイツ証券シニアエコノミストの安達誠司氏が主張しているそうだ。
1. 当てはまりは良いが、何を意味する指標?
実際に、当てはまりは悪く無いようだ(TAMCO ウィークリー・コラム(Vol.498))。しかし、現金+法定準備額が何なのかを考えたときに、量的緩和でそれを拡大できるのかがわからなくなる。法定準備額は預金量で自動的に決まるので現金通貨が問題になるわけだが、実際のところ、日本銀行は現金の量をコントロールできないからだ。
2. 投資が活発でないと現金通貨は増えない
現金通貨に、銀行にある預金は含まれない。日銀は銀行に債券買取などを通じて資金を供給できるが、銀行が融資しないと現金通貨は増えない。銀行が貸さないのか、企業が借りないのかは分からないが、ともかく中央銀行当座預金が増えることになる。つまり日銀は、ヘリコプターで現金をばら撒きでもしない限り、現金通貨の量を直接コントロールする術を持たない。
3. ソロス・チャートと修正ソロス・チャートの差が意味すること
為替レートの説明で、ソロス・チャートが当てはまらず、修正ソロス・チャートが当てはまるとしよう。実際にそうかも知れない。しかし、それは量的緩和を行っても中央銀行当座預金が増えるだけで、為替に影響を与えられない事を示す。つまり量的緩和が意味が無いと言う事だ。
量的緩和で円安誘導を訴えるリフレーション政策信奉者が修正ソロス・チャートを引用する事があるのだが、実際にはそれは日銀が為替レートを操作できないことを意味する。為替レートの動きを十分に説明できる理論が無いのは確かだが、修正ソロス・チャートが量的緩和による為替レート操作の有効性を説明していると言うのも、また俗説の粋を出ない。
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