2010年9月2日木曜日

ガンの特効薬と期待されたウイルス治療薬テロメライシンの現状

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ウイルス療法は、ガン細胞だけに有害な無毒化したウイルスを、薬として使う治療方法だ(下図参照)。患部に注射か点滴でウイルスを送り込んで、ガン細胞の死滅を狙う。たまに報道で紹介されているが、中でも2007年にテレビ朝日「たけしの本当は怖い家庭の医学(スペシャル)」で紹介されたテロメライシンという薬が有名であるとは思う。その期待の新薬は、今、どうなっているのであろうか?

1. 十分な効能が無かった?

報道を総合すると、画期的な効能があったわけでは無いようだ。

2008年5月に、主に安全性を確認するフェーズⅠ試験が成功したと報道され(日経メディカル)、2010年7月に、主に薬効を確認するフェーズⅡ試験がネオアジュバントで試験されると報道があった(Biotechnology Japan)。フェーズⅠとⅡの間の時間が開いているのが、気になる所だ。またネオアジュバントは、手術や放射線療法の前に行われる治療なので、テロメライシン単独では効果が薄いのかも知れない。なお、テロメライシンの開発者である藤原俊義氏は、2009年8月10日に別の薬の臨床試験を開始している(東京大学)。

2. 特効薬の報道の捉え方

新薬の有望性は、明確な数字上の効果があるか、次の治験のフェーズがすぐに行われるかで判断するのが良さそうだ。

2007年のテレビ番組ではウイルス療法の難しさは省略し、特定の事例での症状を強調する内容になっていたので、視聴者の期待を過度に煽った感がある。数字で見れば、テロメライシンのフェーズⅠでは治験は16人に対して行われたのに、12人分の結果で「有望」だという結果しか出ていない。さらに、問題が無ければすぐにフェーズⅡに移るはずだが、2年間のブランクがある。

3. ウイルス療法は難易度が高い

ウイルスは急激に増殖していく上に、突然変異を引き起こしやすい。また、ガン細胞も突然変異を引き起こしやすい。これらの特性が、実用性で問題を引き起こす可能性がある。

予想外の症状を引き起こす場合も、予想外に効かない可能性も出てくる。実際に、異常免疫反応での死亡(1999年)や、T細胞白血病様症状発症(2002年)が確認されている。さらに、テロメライシン(アデノウイルス)には抗ウイルス薬が存在しないらしく、不測の事態が起きても体内で増殖を開始したウイルスを止める事が難しい。

また、突然変異で通常細胞に感染するようになれば、病院内が汚染され医療関係者などに感染していく可能性がある。現在は「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」により、第一種使用規程の大臣承認が必要であるが、これは研究開発の妨げになる。

4. 研究開発が進んでいるウイルス療法もある

もちろんウイルス療法が終わったわけではない。ウイルス療法は、がん特異的であるので、既存の抗癌剤よりは有望だ。

カナダのOncolytics Biotech社が開発した新薬REOLYSINはフェーズⅠ・Ⅱで良好な結果が得られ(Mail Online)、化学療法と併用だが、フェーズⅢにまで進んでいる(日経メディカル)。また、ヘルペスウイルスを元にしたHF10の国内での臨床結果も良好で、米国での臨床試験が行われているようだ(日経メディカル)。テロメライシンの開発者の藤原氏が、新たに開発しNHKのサイエンスZEROで紹介されたG47Δも、臨床試験が開始されている。

RNAi治療が臨床試験で成果を上げつつあるある状況で、ウイルス療法が最終的に生き残る治療法かはわからない。しかし、RNAi治療が癌細胞の活動を阻害するのに対し、ウイルス治療は癌細胞を破壊する点で積極的だ。将来も複数の治療方法が併用されるだろうし、ウイルス療法が一般的になる日も来るのかも知れない。

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