サイエンス・ライターの鹿野司氏が、ビタミンKを与えられなかった子供が死亡した事件について、「二十年に一回しか起きないようなできごとなわけね」と言っていたらしい件での、鹿野氏の道義的・社会的・計算の仮定についての問題点は、SF作家の山本弘氏が言及している通りだと思う(山本弘のSF秘密基地BLOG)。しかし、ビタミンKシロップの代わりに砂糖粒を与えた行為が、まだ過小評価されているように感じる。
1. 現代社会では、2000人に1人のリスクは小さく無い
ビタミンKは不足すると血が凝固しづらくなり、脳内出血などで死亡しやすくなる。新生児が不足しやすく、ビタミンKシロップを与えないと、1700~2000人に1人が死亡すると言われている。率にすると0.05%で小さい数字に見えるかも知れない。
しかし、現代社会では小さくは無い。なぜなら、他に新生児が死亡するリスクが極端に小さいからだ。2001年の新生児死亡率は0.16%で、もしビタミンKシロップが与えられなければ、0.21%になるだろう。つまり、現代社会の新生児全員にビタミンKシロップを与えなければ、死亡新生児は31%の増加になるわけだ。問題の助産師は、新生児に及ぶ危険を31%増加させていたとも言える。
2. 前世紀の初頭なら、2000人に1人のリスクは誤差
問題の助産師や、鹿野氏がビタミンKシロップの投与を過小評価したのは何故であろうか。本人でないと分からないと思うが、現在の新生児死亡率を良く把握していなかった可能性がある。
以下に新生児死亡率のグラフがあるが、急激に減少している事が分かる。1900年の新生児死亡率は7.9%、鹿野氏が生まれた1959年は1.86%、助産師が生まれたと思われる1968年は0.98%で、現在よりもずっと高い。当時の0.05%は誤差に過ぎない。
3. 現代医療の隙間は0.16%
科学的見解とされるものも、間違えている事は多々ある。また、現代医療で治らない病気も多々あるので、科学不信から代替医療に頼る人がいても不思議は無い。
しかし、新生児死亡率の低下を見ていると、栄養価の向上や、公衆衛生の改善も含めた効果なのだが、現代科学の勝利と言えるぐらい劇的に改善している。統合医療で『現代医療の隙間を埋める』と言っている人々もいるが、出産に関しては隙間は0.16%しか無いようだ。
末期肝臓がん患者ならばともかく、看護師資格も持つ助産師が代替医療に傾斜した理由が分からない。恐らく一般に同情できるものではないと考えられる。
4. 死亡率の上昇以外の問題
ビタミンK欠乏症の場合、死亡に至らなくても後遺障害などが残る可能性があるそうだ。問題の助産師は死亡以外のリスクも増やしていたと言える。また、新生児に固形物を食わすなという指摘があって、砂糖粒のサイズにもよるが、確かに窒息リスクも増やしていた可能性もあるだろう。
2 コメント:
ホメオパシージャパンが通常使用するレメディで直径3mm程度です。
http://serkan781.blogspot.com/2010/08/blog-post.html
ホメオパシー的妊娠と出産 由井寅子のホメオパシーガイドブック 自然出産をサポートする36レメディーでは,「ポピーシードにして下唇とした歯茎の間に落とす」って書いてありました。
この本に堂々と「ビタミンKシロップの代わりにレメディを使う」と書いてあります。もし店頭/図書館等で見つけられましたら立ち読みして下さいませ。
情報、ありがとうございます。
直径3mmだと誤飲が多いピーナッツよりは小さいみたいで、唾液で溶ける事を考慮すると、窒息リスクは少ないみたいですね。
しかし、由井寅子氏の著作物に関しては、ホメオパシーが通常医療を否定してきた証拠物になりそうです。
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