2010年9月22日水曜日

頭を悪くしている遺伝子が発見される

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エモリー大学薬学部の研究チームが、マウスの学習能力や記憶力を妨げる遺伝子を特定したと報じられている(Medical Daily)。RGS14と呼ばれる遺伝子を無効にされたマウスは、通常のマウスより迷路の探索と経路の学習が良くできたそうだ。研究チームの同大学薬理学教授のJohn Hepler博士と同僚は、冗談でRGS14をホーマー・シンプソン遺伝子と呼んでいるそうだ。

実験で使われた「迷路」は、モリスの水迷路(上の写真)と呼ばれるもので、不透明な液体のプール内に隠れた足場を用意し、マウスが足場にたどり着ける経路を観察する。実験では、何回かのトライアルで、目印をつけた足場に、まっすぐたどり着けるようになったマウスが、学習能力のある賢いマウスと言う事になったようだ。

RGS14は人間にも見られる遺伝子で、何十年も学習と記憶の形成を統合していると考えられてきた海馬脳のCA2と呼ばれる部分で有効になっている。しかしながらCA2の領域は科学的には外れにあり、機能が良く分かっていない。研究チームは以前の研究で、RGS14が生成するたんぱく質は、脳で学習と記憶で重要な役割を果たす、異なる種類のシグナルの処理に関わる分子を制御することを示している。

研究チームの大学院生Sarah Emerson Lee氏とアメリカ国立衛生研究所のSerena Dudek博士が共同で、電気的な刺激にRGS14欠損マウスのCA2がどう反応するか調べたところ、通常よりも安定した長期増強電位の能力があり、神経細胞はより強い結びつきがあることが分かったそうだ。

今のところRGS14欠損マウスに問題は見られていないが、Hepler博士はまだRGS14とCA2の全体像を把握しておらず、RGS14の欠損は学習と記憶のバランスを見出し、研究で焦点をあてていない部分に影響が出る可能性を示唆している。統合失調症ではCA2のある神経が失われており、他のある遺伝子が失われていると社会的な行動に支障を来たすそうだ。

この研究成果は9月のProceedings of the National Academy of Sciencesの早版で公表されている。

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