駒澤大学の飯田泰之氏が興味深い事を言っている。曰く『「構造問題=様々な難問」程度の意味しか無いのだから,雇用問題に限らないが論説において「構造問題」が説明のキーになっていたら,その筆者の真意は「この問題は難しくてわかりません」だと考えて良い』そうだ(こら!たまには研究しろ!!)。なるほど、具体性が無く、何も言っていないのも同じ政策論議は良く見るので、この主張には共感はできる。
1. 構造的失業の中身
ただし構造問題を指摘する論者が、何も考えていないとは言い切れない。例えば雇用問題、特に失業率に限れば、中身を勘案するのは難しくない。サーチ理論的に高い賃金を求めて失業状態の人間がいるのかも知れ無いし、技術進歩の性質によって失業率があがったのかも知れない(山上(2011))。効率賃金仮説的に賃金を下げると労働生産性が低下する場合だってありえる。
2. マクロ経済政策が悪化をもたらすときもある
構造問題が理由のときに、下手にマクロ経済政策を打つとインフレだけが残って実物経済は何も改善しない事は、スタグフレーションの経験が教えてくれる。理論的にも不景気なのが構造問題である可能性は、リアル・ビジネス・サイクル理論が示している。「まずはマクロレベルの政策」とは行かないし、日本は財政出動やゼロ金利や量的緩和を既に行っている。だからマクロ経済政策の必要性を訴えるには、価格や賃金の下方硬直性や、予測インフレ率の低下を示す必要があるはずだ。非リカード的家計の分布を示したって良いであろう。
3. マクロ経済環境への理解を示す必要性
金融政策や財政政策が有効、無効になる条件を整理して、かつ現状が条件に合致しているか議論しないと、マクロ経済政策が必要だと言う主張が説得力を持つ事は無いと思う。政府支出パズルや流動性の罠などを、どう考えれば良いのであろうか。ノーベル賞経済学者のクルッグマンは、かなり明確に考え方を示した上で、予測インフレ率の引き上げを訴えている。日銀総裁の白川氏は、教科書的なアプローチから、金融政策や財政政策の限界を訴えている。主張の方向の是非はわからないけれども、十分な根拠を示さないと、多くの賛同者を集める事は難しいであろう。
4. 構造問題を整理した上で批判して欲しい
クルッグマンも構造問題派には痛烈な批判を浴びせているものの、構造問題を産業別就労人口と定義した上で批判を展開しており、単なる水掛論とは異なるエッセイになっている。もっとも冒頭の飯田氏のエッセイは560文字制限があったらしく、ほとんど何も書けない状況であった事は、明示しておきたい。
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