2011年7月28日木曜日

原子力発電所は二酸化炭素排出削減の切り札

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Chikirinの日記」のあるエントリーでエネルギー・環境問題研究所代表の石井彰氏の話として、ちょっとした誤解のありそうな主張があった。

二酸化炭素排出問題に関して、二次エネルギー消費のうち電力が約25%しか占めない事を根拠に以下のように主張している。

その2:電力不足を解消するために、化石燃料か自然エネルギーか、それとも原発再稼働かという議論は、環境(CO2)問題にとって中心的課題ではない。

認識がおかしいように感じる。政府方針では原発を増設し、火力依存率を低め、エネルギーの電力依存がもっと増える事を前提にCO2排出削減計画を立てていたからだ。

1. 非発電分野のCO2排出削減は多くは望めない

一次エネルギーのうち約44%、化石燃料の約32%、CO2排出量でも約32%が電力生産に使われる。二酸化炭素排出問題を考えると、非発電分野の68%を減らす方が簡単に思われるだろう。しかし、非発電分野でCO2排出を減らすには省エネ技術を導入するしかない。徐々には効率的になるであろうが、急激には無理であろう。日本はエネルギー効率が既に高く、他国ほど改善の余地も無い(エネルギー効率の国際比較)。

発電分野の32%を減らすには、脱火力・原発増設を行えば良い。コスト非効率にはなるであろうが、技術的には発電によるCO2排出量を0%近くにする事も不可能では無い。比較的短期的、つまり2020年や2030年の目標達成のために計算できるのが原子力だ。

2. 非発電分野は電化でCO2排出を減らす

製鉄業等は省エネを頑張るしかないであろうが、運輸部門、特に自家用自動車では電気自動車の導入でCO2排出削減が期待されている。

電気自動車の電気が火力発電所で作られていれば、CO2排出削減にならないと思う人は勘が良い。しかし自動車のエンジンよりも火力発電所の発電機の方がずっと効率が高く、発電は化石燃料に頼らなくていいので電気自動車の導入はCO2排出削減になる。

化石燃料排出量は、最も売れている乗用車フィットを100とすると、代表的なハイブリッドカー・プリウスは56、数少ない市販電気自動車リーフは39になる。2011年のEPAの市中走行の燃費データ(リーフは28mpg、プリウスは50mpg、リーフは106mpg(Fuel Economy))から、火力発電の発電量割合を60%、発電損失を40%だと仮定して計算した。なお火力発電の比重が3割まで下がれば、一般乗用車の1/5のCO2排出量となる。

3. 火力発電所の高効率化は限界がある

石炭火力の効率性は現在40%程度とされるが、石炭ガス化複合発電技術(IGCC)で50%程度に向上が期待されている。LNG火力の効率性は現在50%前後(新型炉で60%)とされるが、1700℃級ガスタービンで65%程度に向上が期待されている。二酸化炭素回収・貯蓄技術(CCS)が実現でもされない限りは、10%程度のCO2排出削減しか期待できない。大雑把には発電によって排出されるCO2の6%、日本全体の化石燃料によるCO2排出量の2%程度だ。

4. 再生可能エネルギーか原子力かは主たる問題

電力だけが化石燃料以外のエネルギー源を利用できるため、電化を進めること、火力発電所の比重を少なくする事がCO2排出削減の一つの方向性となる。原子力を選択肢として外したときに、再生可能エネルギーが必要となる一つの理由はこれだ。

短期的な原発再稼働では再生可能エネルギーはコストや賦存量で問題にもならないが、長期的な脱原発の議論では代替技術としては注目せざるをえない(関連記事:闇の勢力と夢の発電技術)。政府は2030年には火力発電を半分以下にする事により、日本全体のCO2を約12%削減する予定だったはずだ(関連記事:選択肢の残されていないエネルギー戦略)。運輸部門のCO2排出量は全体の19.5%を占めるが、これも電気自動車で半減させる計算であったはずだ。

1990年比で25%(2007年比34%、2009年比25%)のCO2削減目標を達成するには、電力の火力依存低下、運輸部門の電力依存上昇は必要な要素だ。長期的なエネルギー戦略において再生可能エネルギーか原子力かの議論が発生してしまうのは当然のように感じる。

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