代表的な再生可能エネルギーである風力と太陽光は、発電量が不安定で、需要追随運転ができないという問題がある。電力会社は風力発電の電力を9円/kWhで買い取っているが、不安定なので電力自体には3円/kWhの価値しか認めていない(経済産業省)。
それに対してハイブリッドカー等で使われるリチウムイオン電池を使えという主張を多々見かけるのだが、技術特性の問題で現実的では無い。電力会社らはそれを分かっていて、再生可能エネルギーにあったフライホイール電池と、NaS電池の利用を進めている。
1. 従来型電池等がダメな理由
リチウムイオン電池は大容量化に向かず、過電圧・低電圧に弱く、寿命が短く、コストが高いからだ。コストに関しては、8時間程度の蓄電を想定すると発電単価を70円/kWh程度は引き上げると考えられる。風力発電の発電単価は10円~24円/kWhとされるので、組み合わせて使うには高すぎる。
技術開発でリチウムイオン電池の問題が克服されるという主張もあるが、リチウムはレアメタルでコストが下がる見込みが薄い。耐久性も充電放電回数を抑える回路を組み込むことで実用上の寿命を延ばしている状態だ。
ニッケル水素も大容量化や寿命やコストの面の問題を抱えており、鉛蓄電池はエネルギー密度が低く重量がかさみ過放電に弱いと言う問題を抱えている。揚水発電は大容量で超寿命だが立地条件が限られており、やはりコストが問題になる。
2. フライホイール電池
物理的に円盤を回してエネルギーを保存し、必要時に発電を行うのがフライホイール・バッテリーだ。長寿命で応答速度が速くエネルギー損失も少ないが、数十秒分しか電気をためることができない。
沖縄電力では離島の風力発電システムで、フライホイール・バッテリーを利用している。風力発電は数秒単位で天候が変化するため発電量や電圧が安定しない。短周期変動と言うが、フライホイール・バッテリーでこの変動を消すことができる。
波照間ではディーゼル発電機と風力タービンを組み合わせ、フライホイール・バッテリーで平準化を行う事で、風力発電で12%程度の電力を賄っている(沖縄電力, 波照間可倒式風力発電設備)。
3. NaS電池
負極にナトリウム(Na)、正極に硫黄(S)、電解質にβ-アルミナを利用した高温作動型二次電池。原材料が普遍的で低コスト化が期待されている。鉛蓄電器と比較してエネルギー密度が3倍以上、寿命が2倍となっており、大容量化が可能だ。既に容量あたりのコストは半分と報道されている。300~350℃と高温を維持しないと稼動できないが、2003年に実用化された後に順調に普及が進んでいるようだ。
東京電力大仁変電所にあるシステムでは、出力6MWで8時間分の電力を蓄積できるそうだ。東北電力が出力80MWで容量6時間分のシステムを導入を予定している。これらは長周期変動、つまり需給時間帯のずれの調整もできる。動作温度と爆発の危険性から家庭向きではないが、発電所での設置は問題ないであろう。
4. まだまだ低コスト化・大容量化は必要
再生可能エネルギーの不安定さを解消するには、さらに蓄電池の低コスト化・大容量化が必要だ。フライホイール・バッテリーは容量に問題があるし、NaS電池もまだまだ高コストだ。
NaS電池のコストは2.5万円/kWhと言われている。鉛蓄電池は5万円/kWh、NiH電池は10万円/kWh、リチウムイオン電池は20万円/kWh、揚水発電(葛野川発電所、総コストから計算しており他の蓄電池よりは高く単価計算されている)は2.9万円/kWhなので化学的なバッテリーとしては相対的には安いのだが、風力発電所のコストに積み上げるのにはまだ高い(資源エネルギー庁)。NaS電池は8時間分で寿命15年、風力タービンは利用率20%で償却期間17年間を仮定すると、風力発電の1kWhあたりのコストを7.6円程度引き上げることになる。
蓄電池の低コスト化が進めば、電気の質を上げることにより電力会社の買取価格も自然とあがるので、ビジネスとしての再生可能エネルギーが自立する可能性が増す事になる。逆に言えば、現在の再生可能エネルギーに経済性がまだ無いのは、蓄電池の低コスト化・大容量化が十分に進んでいないからとも言える。
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