二酸化炭素やメタンなどの排出で地球温暖化が進行していると考えられているが、1998年以降2008年までは世界の気温の上昇は中段している傾向もある。ボストン大学、ハーバード大学、トゥルクのフィンランド大学の研究者によると、これは温暖化ガスの排出削減が進んだ結果ではなく、アジアの新興国が冷却効果のある硫黄酸化物(SOx)を大気に排出しているためのようだ。つまり、汚染によって地球温暖化が食い止められている(Reuters)。
硫黄酸化物は雨を発生させ、太陽光を反射する雲を作り出すエアロゾル(硫化鉄)を形成する(関連記事:インドネシア・ムラピ山の噴煙による硫黄酸化物の分布図)。彼らの研究によると、1998年以降は人為的な影響よりも、2002年以降の太陽活動の低下など、他の自然要因の方が温暖化や冷却化に影響を与えているそうだ。1998年以降は冷却化しており、最高気温となった1998年はエル=ニーニョによる異常気象の年になる。
米国科学アカデミー紀要に掲載されたこの研究は、人為的な地球温暖化説に疑問を投げかけている。ただし世界気象機関(WMO)によると、2010年が最高記録に並ぶ猛暑となる一方で、1998年以降の10年間のうち9年間は記録上もっとも暑い。2007年の気象学者によるパネル会議によると、地球温暖化が人為的なものである事は、90%確実だそうだ。
硫黄酸化物排出による地球冷却効果が本当であれば、硫黄酸化物を排出しない天然ガスの利用や脱硫装置が地球温暖化を促進している事になる。地球温暖化が進んだ1940年~1970年代は、SOx排出規制が強化された。逆に温暖化が停止している最近10年間は中国が石炭の消費を拡大しており、大気汚染が問題になっている。地球温暖化は大気汚染規制も一因だと言うのは、感覚的な説得力はある。
ユニークで興味深い研究ではあるが、この研究が環境政策の大きな変化をもたらす事は無いであろう。もし真実だとしても硫黄酸化物の排出は酸性雨など健康上の問題で停止する必要があるので、どちらにしろ地球温暖化ガスの排出抑制は必要になるはずだ。
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