2010年12月17日金曜日

公害要因の微生物で銅資源を採掘する

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低品位の鉱石の場合、銅含有量は数%にしか過ぎず、炉の中で鉱石を熔かして金属を得る乾式製錬では採算があわない。そこで、硫酸溶液で鉱石を溶かし、有機溶媒で精製濃縮した後、電気分解によって銅地金を作る湿式製錬が取られる。ところが硫化銅鉱石などは、硫酸溶液に溶けないそうだ。そこで、バクテリアに鉱石を溶かしてもらうバイオリーチングが注目されている。

バイオリーチングの仕組みは、典型的には次の通りになる。まず、鉱脈に豊富に存在する硫化鉄を、空気と水分に触れさせる。すると、硫黄酸化細菌が硫化鉄を酸化し、硫酸と硫酸鉄(Ⅱ)を発生させる。硫酸は、銅鉱石中の金属をイオン化させる効果がある。さらに、鉄バクテリアは、この硫酸鉄(Ⅱ)を硫酸鉄(Ⅲ)に酸化することで、酸化還元電位をあげる。酸化還元電位があがると、重金属の溶出がさらに促進される。最後に、この重金属の溶出液を、精製濃縮して電気分解し、銅地金を作る。

鉱脈の成分や、硫黄酸化細菌と鉄バクテリアの種類などで、最適なプロセスは模索中のようだが、既に世界の銅鉱山20社がバイオリーチングを試みているそうだ。例えば、チリ国営銅公社は、日本のJX日鉱日石金属とバイオシグマ社を設立し、研究開発と試験操業を行っている。バイオシグマ社のリカルド・バディージャ氏によると、従来の技術と比較してガス排出は10分の1、エネルギー消費量は2分の1、使用水量は5分の1に削減されるそうだ。当然、コストも半減する(NATIONAL GEOGRAPHIC)。

この微生物の活動は、鉱山による公害要因にもなりうるものだ。つまり、採掘に伴い地中の硫化鉄を野ざらしにするだけで、重金属がイオン化して流れ出して水脈を汚染する可能性をもたらしている。また、流出した硫酸が、水道管内の嫌気菌によって硫化水素に変換され、水道管の上部やコンクリートを侵食する問題は良く知られている。バイオリーチングは、従来は都合が悪かった細菌の活動を、うまく経済活動に組み込めるようになっている点は興味深い。

なお、バイオリーチングは銅以外の亜鉛鉱山にも適応できるほか、嫌気性の鉄還元細菌を用いて二価鉄イオンを生成し、鉄よりもイオン化傾向の低い酸化金属を還元する方法も模索されており、コバルトや白金の豊富なコバルト・リッチ・クラスト鉱床からの深海底鉱物に、バイオリーチングを適用しようと言う試みもある。

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