2010年12月19日日曜日

狂牛病原因のプリオンも進化する事が判明する

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従来、病菌の原因は細菌かウイルスだとされてきたが、狂牛病(BSE)には病因になる細菌やウイルスが発見されず、たんぱく質のみで構成されたプリオンのみが病因として見つかっている。プリオンに加熱処理しても危険性が残るため、今ではBSEの原因はプリオンだと考えられている。

このプリオンが『進化』することを、フロリダ州スクリップス研究所伝染病部門長のCharles Weissmann博士の率いるチームが発見し、Proceedings of the National Academy of Sciences誌に研究を掲載した。プリオンは宿主である細胞を移ると性質が変化し、少なくとも一つのケースで、プリオンの形態も変化したという(ScienceDaily)。これは、プリオンを駆除する薬剤を開発できたとしても、細菌やウイルスのように耐性プリオンが発生することを意味し、従来の考えよりも治療が困難であることを示唆している。

プリオンはBSEだけではなく、ヒトのクロイツフェルト=ヤコブ病や、シカの慢性消耗性疾患(CWD)の原因になる。プリオンは、DNAやRNAの遺伝子情報を持たないが、増殖する能力を持つ。哺乳類は健常状態でも、正常な形状のプリオンたんぱく質PrPCを生成している。上述の病気に感染すると、異常な形状のたんぱく質PrPScが、宿主の正常なPrPCの構造と形状を変化させて、PrPScに作り変える。こうして増殖したPrPScは重合していき、巨大な高分子シートになって宿主の細胞を傷つけると考えられている。PrPScは分子の折りたたみ方(fold)が異常なわけだが、この折りたたみ方が頻繁に変化するようだ。折りたたみ方によって増殖速度が異なるため、支配的な株のプリオンが発生する。構造は違えどウイルスと同じ多種性がプリオンにもあったと、Weissmann博士は指摘している。

この研究は、Sukhvir P. Mahal氏が筆頭執筆者で、Shawn Browning氏、Jiali Li氏、Irena Suponitsky-Kroyter氏が共同執筆者となっており、全員がスクリップス研究所に所属している。また、アメリカ国立衛生研究所とAlafi Family基金の援助で行われた。

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