2010年8月28日土曜日

ガンを殲滅?RNAi治療が臨床実験される

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現在の抗がん剤は副作用が強く、延命効果が疑問視されるものも多いのは、良く知られている事実だ。75%のガンが有効な治療薬が無いとされる。しかし、ようやくガンを構造的に殲滅できそうな有望な治療方法が臨床実験に入ったようだ。

人間等の細胞は、DNAの情報をメッセンジャーRNA(mRNA)が細胞内の他の器官に知らせることにより、たんぱく質を生成している。1998年に、このmRNAの動きを阻害するRNA干渉(RNAi)という現象が発見された。RNAiは哺乳類に本来備わっている免疫機構で、細胞に有害なRNAを送り込み自己増殖を行うウイルスの一部が持つ二本鎖RNAや、その他のあらゆる有害なmRNAを破壊することができる。

POPSCIは、昨年4月に化学療法が有効でない肝臓がん患者19人に、このRNAi干渉を利用したガン治療の投薬実験が行われて、ガンを縮小させる事に成功したと伝えている。6月にバイオテク企業Alnylam社は、この新薬ALN-VSPが被験者19人の62%の肝臓がんへの血流をストップしたと公表した。

同社のALN-VSPは、ガンが生成する二つのmRNAの動きを阻害する、合成された二本鎖RNA(siRNA)から構成される。ALN-VSPを細胞に投入されると、人体のRNAiシステムが血管の生成を過剰促進するVEGFと、急激な細胞分裂を作動させるKSPと、合成された二本鎖RNAを破壊する。肝細胞中で、この二つのmRNAを持つ細胞はガン細胞だけなので、ガンは成長を停止することになる。

RNAi治療には技術的な課題もある。デューク大学で分子生物学者のBruce Sullenger氏は「RNAiで2万の遺伝子のどれでも一つを停止することができるが、課題は目標の細胞に薬剤を注入し、他の細胞に悪影響を与えないことだ。」と述べている。研究者は、健康な細胞で通常のたんぱく質生成を乱さないか、目標に薬剤が届く前に免疫機構が薬剤を破壊しないかを気にしてきたが、ALN-VSPはこの課題を克服したようだ。なお、同社はALN-VSPの被験者を36名追加し投薬量を増加させて、さらに臨床実験を進める予定だ。

RNAi治療は、がん以外の病気にも有効であると考えられ、大手の製薬会社はRNAiの開発プログラムを開始している。Alnylam社もハンチントン病、高コレステロール、黄斑変性症、筋ジストロフィー、HIVの臨床実験を行っている。また、カリフォルニア州のホープ市国立医療センターの分子遺伝学者John Rossi氏を含む専門家たちは、RNAi治療は基本的にシンプルであるため2年以内に実用化されるのではないかと語っている。

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