2024年7月13日土曜日

ようやくのウクライナ軍の米国製戦闘機F-16配備で、何が変わるのか?

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搭乗員の訓練が終了し、近日中にウクライナ軍に米国製戦闘機F-16の提供が開始される*1

4個飛行隊(64機体制)が実現できる数が約束されている一方、当初は配備数が限られる*2ようだし、そもそもロシア空軍機に対して圧倒的に優勢とは言えない機体だが、報道での慎重な見方以上に影響は大きい。

1. ウクライナが航空優勢をとる段取りがついた

今年は無理でも、数年以内に、ウクライナが航空優勢をとる段取りがついた。乗員や整備士の訓練手順の整備などがついたわけで、継続的に配備数を拡充していける。

F-16は非ステルス機と言う意味で旧世代ではあるが、ブレンデッドウィングボディとフライ・バイ・ワイヤといった新機軸を積極的に採用した多用途戦闘機で、導入から時間が経っており実戦利用も多い一方で、近代化改修も行われて来ている。他の西側兵器とデータリンクが可能で、やるかどうかは別として、NATO機からの情報をリアルタイムに受信できる。ロシアはまだステルス機を実戦投入できる段階に至っていないので、少なくとも劣位にはない。5,000を超える生産数があり、潜在的に供与可能な機体、交換部品が多い上に、徐々にF-35に置き換えられていく途中なので、数を揃えやすい。

2. ロシア軍の滑空爆弾への対処が可能になる

ウクライナ軍にとって喫緊の課題であるロシア軍の滑空爆弾*3への対処が可能になる。現在、ロシア軍機はウクライナの対空ミサイルを恐れて、ウクライナ上空を原則として飛んでいない。対空ミサイルの射程外となるロシア領内の飛行から、60Km以上も射程がある滑空爆弾を投下することでウクライナ軍に爆撃を行っている。ロシア軍から見て、この滑空爆弾は衛星測位システム(GLONASS)で誘導して精密爆撃ができ、ロケットエンジンがついていないので廉価で大量に投下できる上に、弾道ミサイルや巡航ミサイルと異なり熱源が無いので対空ミサイルで撃墜が困難という利点がある。急ごしらえで、米軍のJDAMを真似て無誘導爆弾に取り付けるキットを作ったので、適切に作動せずロシア領内に落下して不発弾になっているそうだが、それでもかなりの脅威だ。しかし、F-16によって滑空爆弾を投下するSu-34などの戦闘爆撃機を撃墜可能になれば、今までのようには投下できない。

3. 十分な運用体制を構築できるか?

もっともF-16戦闘機の運用は容易ではない。三つ難点がある。

ロシア軍の防空システム
F-16はステルス機ではないので、容易に撃墜される。ロシア軍のS-300/400を積極的に潰してきているので、ある程度は解決されているはずだが、残っていると厄介なことになる。
弾道ミサイルによる飛行場への攻撃
滑走路に駐機中の戦闘機は的である。既にウクライナ軍はロシア軍の弾道ミサイルに何回か駐機中の航空機を弾道ミサイルで破壊されている*4。防空システムの強化と掩体壕えんたいごうの拡充、そして露天駐機する惰性の排除がいる。
空中給油機の不存在
現代の戦闘機は脚が弱いなどの理由で、燃料と弾薬の両方を満載して離陸できない。米軍では、燃料を最低限にして離陸し、空中給油機で燃料を入れる運用を行っている。空中給油機を持たないウクライナ軍はそんなことはできない。当面の防空戦闘では問題にはならないが。

数が増えれば近接航空支援によって地上部隊を支援できるようになり、昨年の反転攻勢ではできなかったロシア軍の防御陣地の突破に役立ったりするが、当面はウクライナ軍がまともに運用できるかが問題になる。

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