UBISOFTの人気シリーズの最新作「アサシン クリード シャドウズ」のトレーラー動画が炎上している。ゲームを面白くするために日本の文化や風俗を変えたと言うのではなく、時代考証が色々とおかしくなっているからだ。独自のファンタジー世界ならば良かったのだが*1、1581年から1582年の日本が舞台と明確にわかってしまっている*2ので明確に分かる誤りも多くなり、日本人蔑視や文化盗用*3といった非難、さらには発売中止を求める署名活動も行われるに至った。
これに対して、発売中止を求めるのは表現の自由を軽んじているというような話がされていた*4。しかし、何万と署名を集めようともゲーム開発会社に対する要請であることは変わらず、ゲーム開発会社の決定権を認めている。ゲーム開発会社の決定権は侵害していないし、侵害しようともしていない。文句をつけているだけである。
検閲や、その他の支配的な地位からの脅しであれば、ゲーム開発会社に決定権ががなくなるので、表現の自由の侵害と言える。立法による規制を主張すれば、ゲーム開発会社の決定権を制限しようとしているわけだから、表現の自由を軽んじていると言える。しかし、ゲーム開発会社の決定権を認めている以上、表現の自由の観点からどうこう批判するのは困難だ。
「次にフェミニストがオタクたちが好きな表現物を攻撃してきてキャンセルされそうになったとき、どう論理的に抗弁するの?」と言う話もされているのだが、クリエイターや広告主の決定権を侵害しようとしていない限りは*5、是々非々で主張の論拠を検討して反論すればよいだけ。表現の自由と言うスローガンで、批判の自由を封じ込めようと言うアプローチがそもそも間違っている。発売中止を求めるのは不当と言う主張はあってもよいが、表現の自由の擁護ではない*6。
ところで「アサシン クリード シャドウズ」へのダメ出しの山々を見ていて思ったのだが、資料を普通に参考にしていたら生じないような誤りが多数入っている。UBISOFTの皆さん、生成AIに質問をしているだけなのに、「我々は、開発初日から日本に関する専門家と制作を進めています。」*7などとは言っていないよね?
*1近年の欧州風ファンタジー世界にはナーロッパと言う揶揄があるが、非があるとは思われていない。
*2織田信長に仕えたアフリカ系の弥助を主人公の一人にしているので、1581年から1582年が舞台だと分かる。
*3文化盗用(cultural appropriation)は支配的地位にある白人が、抑圧されたマイノリティの文化をその本来の、例えば宗教的な意味を無視して模倣する事を指すので、日本人も戯画化して創作に用いてきている侍や忍者に関しては成立しない。
*4アサシンクリード・シャドウズの「発売中止」を求める署名のお話|手嶋海嶺
*5表現規制の方の問題は、最近の表自界隈でも積極的に発言をしている手嶋海嶺氏が発信をはじめる前、2018年の渡辺真由子氏の剽窃騒動で一段落がついてしまった。
*6粗雑なゲームをつくっても他者から口汚く罵られない権利をゲーム製作会社に与えようとしている。
*7【インタビュー】弥助はなぜ主人公の1人になったのか。改めて「アサクリ シャドウズ」ディレクターに直接聞いた - GAME Watch
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