2024年7月4日木曜日

明治神宮外苑の再開発計画の承認取り消しは財産権の侵害になるのか?

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都知事選に立候補している蓮舫氏が、明治神宮外苑再開発の是非を問う都民投票を実施するという公約を追加し*1議論を呼んでいる。民間の事業を制約するのは財産権の侵害になると言う批判が多いようだが、譲渡に至る経緯が複雑な土地なのでそうなるかは判然としない。

明治神宮の私有地なのだから、明治神宮は他の私有地と同様に自由に利用してもよい、計画の阻止は財産権の侵害だと言う批判は、明治神宮外苑が私有地といっても特異なものであることを見落としている。

国有地であった明治神宮外苑は、明治神宮に格安で売却するときに、

  1. 国民が公平に使用できる
  2. アマチュアスポーツの趣旨にのっとり、使用料・入場料を極めて低廉に(する)
  3. 施設を絶えず補修する経費の見通しがある
  4. 民主的運営をする

と言う条件がつけられた*2が、現行の計画がこの条件に沿っているかは自明ではない。当時、具体的に念頭に置かれていた施設は、野球場、競技場、水泳場で、競技場は国に売却され、水泳場は2002年に閉場してフットサル競技場になっているため、再開発事業の推進者たちは野球場が存続すれば済むと解釈しているようだが、売買契約の条文を参照して正当化されているわけではない。

明治神宮外苑は、都市計画公園に指定されている。これも国有地の売却条件からそうなっているのだと思うが、これは政治や行政が東京都の方針を変更すれば、土地利用計画を変えられるということになる。議論になっている再開発計画は、秩父宮ラグビー場を公園として活用しきれていない未供用エリアと認定して、公園まちづくり制度を利用して高層ビルの建築を可能にしたのだが、これは行政の制度の解釈変更によるものだ*3

売却条件もしくは公園まちづくり制度の趣旨を無視した認可であったのだから、それらの趣旨に沿った行政判断に訂正すると主張する余地はある。最終的には裁判官が判断することだが、行政の長が裁量範囲を超えていると言い切ることはできない。なお、最高裁は事業の差し止め請求は棄却しているが、売却契約や制度趣旨にあった事業計画なのか判断は下していない*5。再開発計画の承認取り消しが財産権の侵害になるかは判然としないし、すると都知事が交代になったとして、明治神宮外苑の再開発を止めることが不可能かもよくわからなくなる。

止めることが不可能では無いとしても、止めるべきかは別なので注意しよう。球場やラグビー場の更新は必要だが、その費用は誰かが負担する必要がある。現行計画では商業ビルを建てることで行政負担をゼロにしているが、現行計画を頓挫させれば更新費用の捻出が問題になる。樹木の伐採などもあるであろうが、屋久杉のように年数自体が貴重なものではない。

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