インフレ目標政策、量的緩和、拡張的財政政策のポリシー・ミックスだと考えられるアベノミクスで、バブルが発生すると経済評論家の池田信夫氏が主張している(BLOGOS)。
たぶん、起きないから*1。不動産や株などの資産バブルが起きる条件は、金利が低すぎる事だけではない。
完全情報で合理的バブルを引き起こすには、その低金利で無限に資金調達が可能でないといけない*2。情報の非対称性がある場合でも、不動産や株などの資産価格の将来見通しに詳しくなく、しかも資産購入後もしばらくは詳しくないままの買い手が必要になる。また、真の資産価値を知る裁定者の売買が著しい資金制約などを受けている必要もある*3であろう(Brunnermeier(2007))。
この世から不動産需要が無くなる事はないと思うが、少子高齢化で需要量は低下している。先行き見通しは良くは無い。このマクロ的な背景を考えると、金融機関が無制限に融資を行うとも思えない。また、80年代後半と比較して、金融機関の不動産鑑定も厳格になっている。株式も同様にマクロ経済予測の影響を受けるはずだ。さらに80年代後半のバブルでさえ、最終的にはインフレ率の上昇をもたらした*4わけで、むしろインフレ目標政策は資金調達に限界をもたらす。資産価格の将来見通しに楽観的過ぎる買い手が出てくるとも思えない*5
こういうわけで、バブルは発生しないであろう。アベノミクスが気に入らない人がいるのは分かるが、何でもネガティブな印象のあるレッテルを貼ればいいと言うわけではない。
*1理由無き熱狂がバブルの根源と見なす論者もいると思うが、その場合はアベノミクスの内容と無関係に起きるであろう。
*2横断性条件が満たされていたら発生しない。
*3合理的な裁定者が価格上昇に反応して資産を十分に売れるときは、理論的にバブルは発生しえない。つまり、住宅バブルが発生しつつあるとしても、精力的に大手の不動産開発会社が住宅を供給してしまえば、そこでバブルは封じ込められる。
*4バブルのときのインフレ率は2~3%ぐらいあった([世] 日本のインフレ率の推移)。
*5産油国や新興国の金持ちが不動産市場に参加することはあり得るかも知れない(関連記事:所得税の最高税率75%とフランスの不動産市場)。
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