と、首都大学東京の松岡多利思氏が呟いたのを、id:weyoume3氏が教えてくれた。松岡氏は示す事ができると言っているだけで、そうなるとは言っていないのだが、自明に等しい法則と思う人が出てきそうなので元ネタを辿ってみた。
"Modeling Monetary Economies"は、新しいChamp、Freeman、Haslagの三人が著者のバージョンと、古いChamp、Freemanが著者の第2版が売っている。さて、新版はなぜかKindleで買おうとすると旧版に飛ばされる。何か癪なので、旧いバージョンを参照する。冒頭部分(Chapter 1)の話なので、内容はそうは変わらないであろう。
そこでは簡単なOLGモデルが構築されている。そこではt期に働いて消費財を得た人が、消費財の一部と貨幣*1を交換し、t+1期で貨幣と消費財を交換する*2。t期とt+1期の消費のバランスが取れている方が望ましい一方で、消費財は貯蓄できないので、唯一の貯蓄手段として代々と貨幣が交換され受け継がれて行くわけだ(下図)。人口が減ると消費財の生産量が減るために、貨幣量が一定であれば貨幣の価値が下がっていく。つまりインフレが起きるわけだ。
論理的な誤りがあるわけではないが、リフレーション政策の信奉者が人口減少はインフレの圧力になると喜ぶのは、ちょっと考えた方がいい。
このモデルには、まず、外部貨幣(マネタリーベース)と信用貨幣(マネーストック)の区分けが無い。外部貨幣しかないので、マネタリスト的にインフレ圧力になる。結局、マネタリーベースを増やせばインフレが起きると言っているのと変わらない。次に、投資/融資が無いために、金利が無い。貨幣価値の減少と言いつつ、金利の低下を意味しているかも知れない。少なくとも、ゼロ金利制約である流動性の罠は議論できそうに無い。
そもそも人口減がインフレ圧力と言うインプリケーションを信じてしまうと、リフレーション政策自体が不要になる。自然放置で問題解決と言うのは、リフレ派の主張では無いはずだ。
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