日銀政策決定会合で、事前の噂どおりに、インフレ目標政策が導入され、資産買い入れ方式が変更されることになった(日本銀行)。インフレ目標値に近づくまでは、長期国債などの金融資産を買い切り続ける事になる。非伝統的金融政策に“思い切って”舵を切った。
学術的な背景としては、インフレ目標政策はKrugman(1998)*1、買い切りオペに関してはAuerbach and Obstfeld(2005)を持つ事になる。インフレ目標を定めることで、将来の金融緩和の継続を約束し実質金利を低下して投資を促進しつつ、債券の買い切りオペで政府のシニョレッジ獲得を促進して行き、インフレ圧力を増す事になる。
1. メリット/デメリットは議論がある
問題が無いわけでは無い。金利上昇局面になれば、中央銀行のバランス・シートが毀損する事により、債券オペに限界が出るかも知れない*2。また、ゼロ金利下ではWallace(1981)*3が示唆するように、資産買い入れにやはり効果が無いかも知れない。“思い切って”と言う表現に、かなりの苦悩が感じられる。
目標の達成時期などを定めないフレキシブルなインフレ目標政策である事が、批判を呼ぶかも知れない。また、名目GDP水準目標の方が合理的と思う人*4も、消費者物価指数を用いることに懐疑的な人も、不満を持つ事であろう。資産買い入れ方式が変更が2014年からと言うのも、議論を呼びそうだ。しかし、KrugmanやWoodfordの提案に大きく近づいたのは確かだ。大きな社会実験にはなるであろう。
2. 今後、融資や投資が増えるのかが注目される
さて、今後の経済指標から目が離せないわけだが、注意する必要が幾つかある。雇用情勢などを見るに既に日本は景気回復期であり*5、貿易収支の継続的赤字など為替レートも円安方向に行く要因は数多くある。気分的な変動の多い株価も参考にはならない。
見るべき指標としては、社債や長期国債の金利や、国債オペの入札状況、銀行融資残高、企業部門の資金余剰額(もしくは民間固定資本形成)などになるであろう。特に銀行融資は2001年から2006年の量的緩和期に拡大しなかった*6ので、今後、拡大するかが注目される。
*2関連記事:日銀がリフレーション政策を嫌がる理由
*4関連記事:名目GDP水準ターゲット政策
*52012年10月時点で失業率は4.2%まで改善しており、2012年の大卒内定率は93.6%と2005年の水準まで回復している。特に中小企業の人手不足は、リーマン・ショック前の高水準となっている。構造的失業率がどの程度には見解の相違があるであろう。OECDで4%、内閣府で3%程度と見ているようだ。
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