2013年1月9日水曜日

名目GDP水準ターゲット政策

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著名なマクロ経済学者のWoodfordが提唱している名目GDP水準ターゲットに関して、既に経済評論家が誤解を始めたようなので、混乱した認識の人が出ると思うが、整理しておきたい。

金融政策のコミットメントによる投資コントロール効果を狙ったもので、従来のインフレ目標政策や、サムナーの名目GDP成長率ターゲットと基本的には良く似ている。

Woodford(2012)のP.39 1.3.1節に説明があるのだが、仕組みは難しくない。名目GDPのトレンドと、実際の値を考える(上図)。現時点での名目GDPがトレンドより低ければ金融緩和、高ければ金融引締になる。これは水準で考えるので、トレンドとのギャップが大きく広がれば、名目GDP成長率が何%あろうとも金融引締めは行われない。経路はともかくGDPギャップが埋まるまで金融緩和と言う基準だと考えて良いであろう。

Washington Postのインタビュー記事を読む限り、産出ギャップ調整物価水準(the gap-adjusted price level target)、名目水準GDP、物価水準、インフレ率の順番で、Woodfordは政策ターゲットとして望ましい指標と考えているようだ。主著の一つであるEggertson and Woodford(2003)の分析からすると産出ギャップ調整物価水準が理想的だが、名目水準GDPは現実的に妥協できる指標と言う事らしい。なおバーナンキFRB議長のインフレ目標の導入や、失業率に関する言及も評価しているので、中央銀行がターゲット政策を取る事自体は評価している。

また、ゼロ金利下で名目GDP水準ターゲット政策を導入するメリットについては、Krugman(1998)と基本的には同じで、財政政策との併用を考えているようだが、長期コミットメント狙いとなっている。Woodford(2012)のP.87の一部を引用しよう。

At the same time, commitment to a nominal GDP target path by the central bank would increase the bang for the buck from fiscal stimulus, by assuring people that premature interest-rate increases in response to rising economic activity and prices would not crowd out other types of spending than those directly affected by fiscal policy.(同時に、経済活動と物価の上昇に対応した時期尚早の金利上昇が、財政政策に直接影響を受ける支出よりも多く、財政刺激以外の種類の支出を押し出さない事を人々に保証することで、中央銀行による名目GDP経路へのコミットメントは財政刺激の支出に見合うだけの価値を増加させる)

さて、日本で名目GDP水準ターゲット政策を導入した場合、いつの時点からのGDPトレンドからの乖離を妥当とするかで揉めに揉めそうだ。米国と違い、生産年齢人口の大幅な変化があるので、トレンドでいいのかも疑問が残る。また、既にGDP比での累積政府債務が大きいため、財政政策との併用は難しいかも知れない。増税すればいいのだけれども。

追記(2013/01/10 03:51):サムナーも名目GDP水準目標では?とツッコミが入った。

1 コメント:

POM_DE_POM さんのコメント...

>トレンドでいいのかも疑問が残る

そこはとても気になります^^;
人口が減少している以上、1人辺りGDPはともかく、名目GDPが過去と同じように上昇していくっていうのは無理がある気が。
タイラー・コーエンの大停滞やらエネルギーの問題も含め、過去のトレンドが将来の適正な水準なのかも、ちょっと怪しいですし。


個人的には(増税アレルギー?も含めて)財政に問題を抱えているだけに、コミットメントがより重要になってくると思うので、インフレ目標だけではなく、こうした「水準」をターゲットにしたものも、もっと議論して欲しいです。

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