今年のノーベル経済学賞は、マッチング理論を理由として、ShapleyとRothと言う、メカニズムデザイン好きのミクロ経済学者が浮き浮きする人々に決まった。Gale and Shapley(1962)で示されたアルゴリズムが、Roth(1991)などで実社会で効率的なシステムとして使われている事が確認され、さらに他の社会制度の設計に応用されるようになったようだ。もちろん、理論的にも大きな広がりを見せている。
Gale and Shapley(1962)の中の安定的な割当と結婚の問題が目を引くのか、「最も良い結婚相手を決める理論」などと説明されている*1。しかし人目を引くには結婚の理論は良いのであろうけれども、近年の結婚生活の事情からは、Gale and Shapley(1962)の示すアルゴリズムは効果的では無いように思える。
Gale and Shapley(1962)の結婚問題を、現代風に説明してみよう。厳密には結果は異なる事になるが、男女は入れ替えても構わない。
- 男性と女性が同一人数存在するとする
- 男性が女性にデートを申し込む
- 女性はその中の一人と婚約はせずにデートを行う
- 振られた男性は、次に好ましい女性にデートを申し込む。過去に振られた女性には、再度、デートを申し込む事はできない。
- 女性は前回デートした男性と、新たにデートを申し込んできた男性の中から一人を選び、婚約はせずにデートを行う
- 女性全員がデート候補が一人に定まれば、結婚をする。定まっていない場合は(4)に戻る
このアルゴリズムによって得られる状態は、安定的である。男性が妻より魅力的な女性と不倫をしたいと思っても、それらの女性は男性を既に一度ふっており、男性よりも魅力的な夫がいる。女性が夫よりも魅力的な男性と不倫をしたいと思っても、それらの男性は女性よりも魅力的な妻の候補がいたので、女性にデートを申し込む事も無かった。不倫を試みても、良りよい異性と巡り合うことはないのだ。
ここまで説明すると、ヨリを戻す男女に目をつぶると、これが普通の恋愛と大差ない事がわかる。米国製ドラマほどはひどくないが、デートを繰り返して相手を決めて行くのは、現代では一般的だ*2。モテは恋愛経験が豊富に、非モテはそうではなく、結婚まで辿りつく事になる。本当のモテはデート相手が変化せず、中途半端なモテはデート相手が頻繁に変わるわけだが、デート相手がいる時期が長いことに変わりは無い。
さて、Gale and Shapley(1962)からは、御見合いで定まるパートナーよりも、恋愛を繰り返して定まるパートナーの方が安定的に思える。しかし、日本でこういう恋愛が多く見られるようになったのは、ここ30~40年だ*3が、実際は離婚率は上昇している*4。実社会でこのアルゴリズムが上手く機能しているようには思えない。他の要素の影響が大きいのだと思うのだが、医師と医療機関のマッチングなどの事例の方が機能的に見えると思う。
話が無理やりすぎ? ─ えぇ、非モテのヒガミですとも。なおスタンフォード大学の小島武仁氏がノーベル経済学賞の解説をしているので、真面目な人はそちらを拝読してください ヽ(´ー`)ノ。メカニズムデザインに興味が出た人は「市場を創る」ぐらいを見てください(´・∀・`)。
*1厳密には、この論文では大半の人は、Example 2では誰も最も好ましい結婚相手とは結婚できない。後述するが、全ての人の結婚相手が決まったときに、不倫して駆け落ちする意欲が沸かないだけだ。
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