『田村秀男氏の間抜けな「どマクロ」経済学』で経済評論家の池田信夫氏が不思議な為替レート決定理論を展開している。
田村氏の主張を擁護する気は無いが、池田氏の議論もかなり奇妙だ。為替レートの決定理論として基本的な存在である、金利平価を理解していない可能性がある。
まずは以下の部分を見て欲しい。
日銀の国債購入は邦銀の国債投資の利益を保証して国債バブルを膨張させ、外人の円買いを誘って円高の原因になっているというのは、マーケットの常識
「日銀の国債購入は邦銀の国債投資の利益を保証」と言うのは、低金利で簿価での債券価格が維持されている事を言いたいようだ。金利が上がれば、債券価格は下落するので、保有する金融機関は簿価で損失を出す*1。
「国債バブルを膨張」と言うのが、良く分からない。金利はゼロにまでしか下がらず、国債価格も額面までしか上がらない。バブルの定義次第だが、収益と乖離して価格が青天井まで上がる資産バブルとは、大きく異なる何かだ。
「外人の円買いを誘って円高」と言うのは、さらに良く分からない。デフォルト・リスクも加味する必要はあるが、金利平価で考えれば、低金利の日本国債など売り飛ばして、高金利の外国債券を買うほうが望ましい。
日本はずっとゼロ金利になっている。金利平価で考えれば、円高になったのは米国の金利が下がったからだ。2007年6月は1ドル123.48円で、国債(六ヶ月)金利が日本が0.638%で、米国は5.35%だった。2010年6月は1ドル88.66円で、国債金利は0.286%と0.61%だった。
為替レートの説明では、その説明力が十分ではないと考える人も少なく無いが、金利平価を前提に考えるのが今でも常識的である*2。田村氏は「マネタリーベースが増えると物価が上がるという19世紀の貨幣数量説」に依拠していると批判する池田信夫氏は、何に依拠して主張しているのであろうか。「金融政策とは金利調整」と言うぐらいなら、金利平価を前提とすべきであろう。
0 コメント:
コメントを投稿