2011年6月7日火曜日

自らが望んだ世界で裁かれた村上世彰

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2005年のライブドアのフジテレビ買収騒動(ニッポン放送株TOB)で、村上世彰氏率いる村上ファンド(中核はM&Aコンサルティング)がインサイダー取引を行った事による裁判は、最高裁が上告を棄却したため、村上氏を懲役2年、執行猶予3年、罰金300万円、追徴金約11億4900万円とした2審・東京高裁判決が確定した。

1. 検挙は一般投資家保護のため

国策逮捕とも言われるこの事件だが、欧米型の公平な金融市場では、インサイダー取引は厳しく取り締まる必要がある。特別な情報を知りうる人々は、株式市場で有利な立場になるからで、一般投資家が損をしやすくなるためだ。野放しにしておくと、一般投資家が株式取引をやめてしまうので、金融市場が縮小する。

2. インサイダー取引への監視は緩かった

日本でも、そして欧米でも、昔はインサイダー取引への監視は緩かった。ジェフリー・アーチャーの小説『ケインとアベル』でも、主人公のアベルがインサイダー情報で利益を得る話がある。しかし、規律なき金融市場はプロ同士の取引の場になり、結局は銀行主体の金融システムになりがちだ。

日本では1996年から2001年まで金融制度の改革が進んだが、野村総合研究所によると、それ以前とそれ以後ではインサイダー取引の告白件数に大きな差がある。金融市場参加者のモラルが下がった可能性もあるが、インサイダー取引への監視が強化されたと考えて良いであろう。

3. 村上氏は欧米型金融市場を追求していた

欧米型金融市場のルール違反を犯した村上氏だが、逆に欧米型金融市場を追い求めていた面もある。欧米型の金融市場では、大口株主の機関投資家が経営陣を厳しく監視を行い、経営陣が会社に損害を与えるのを防止すると言う話がある。2002年に村上氏は、株式総会で敗れはしたものの、アパレル企業東京スタイルの経営陣に内部留保の配当を迫っており、モノを言う投資家として注目を浴びていたのも事実だ。村上氏は欧米型金融市場を追求していた人物とも言える。

4. 大口投資家は経営陣の監視を期待されている

上場企業の経営陣を、個人投資家が監視するのは難しいとされる。情報生産能力のある大口投資家が、経営陣を監視する事が、経営陣に株主利益を守らせる一つの方法と考えられている。村上氏の「モノを言う株主」という姿勢は、欧米型資本主義での経営者への規律付けで重要な役割を果たしている存在だ。規律をもたらす存在が、規律違反で退場になったのはとても残念だと言わざるをえない。

5. 日本の金融市場の規律は厳しくなっている

日本の金融市場の規律は厳しくなり、ニッポン放送TOB騒動以後もインサイダー取引による検挙は続いている。経営陣とその関係者以外の摘発も増加した。2006年に日本経済新聞社社員、2007年にNHK職員がインサイダー取引事件を引き起こしている。同騒動の主役であったライブドア社の堀江貴文氏は、同時期のライブドア事件で有価証券報告書の虚偽記載、偽計取引・風説の流布で、懲役2年6ヶ月の実刑判決が確定した(関連記事: 僕だけ実刑というのは不公平?ホリエモンの起こした罪が重い5つの理由)。

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