2012年10月29日月曜日

鉄をプラチナに変えてみましょう!バーチャルだけど

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プラチナは宝飾品として有用なだけではなく、白金触媒として様々な化学反応に応用されている。近年、需要とともに価格が増しており、レアアースと同じように資源確保の一つのテーマになっている*1

レアメタルは地球上に偏在しており、地政学上のリスクも大きい。またシリコーン消泡剤など液体触媒を使うばあいは、僅かながら消耗していってしまう。ジーンズなど身近なものにも、プラチナの分子が含まれているそうだ。

安く大量にある鉄をプラチナに変換できれば、正確には白金触媒と同じ機能を持つようにできれば、事実上の錬金術となる。プリンストン大学の化学を専門とするPaul Chirik教授は、このバーチャル・アルケミーに挑んでいるそうだ(NYT)。

Chirik教授は大学院生時代に、イリジウムを触媒に使った化学反応を研究していたが、イリジウムはプラチナ同様に効果なため、指導教官はイリジウム化合物を鍵付きの引き出しにしまっていたそうだ。指導教官に挨拶してイリジウム化合物を取り出し、それを周囲に黙って使う事に煩わしいと思ったのか、もっと安い元素を利用する事にしたようだ。

教授の開発した触媒は、鉄分子を有機分子の中に入れた配位子であり、この配位子が電子を化学結合に使えるように変える一方で、分子形状を決める足場として機能する。化学にとって分子の配置は重要で、配位子が鉄を正しく触媒として機能する位置に定めるそうだ。

ただし鉄は触媒として利用しやすい素材ではない。まず、酸化しやすいのでグローブボックス内の真空中で作業しないといけない。また、製品の色に影響を与えて黒くしてしまいやすく、その解決に10年近くの時間がかかったそうだ。しかし、今では白金を使った場合と同様のシリコンを、鉄を使った触媒で作る事ができる。なお、教授の研究はシリコン製造メーカーのChevron and Momentive社に出資されているそうだ。

Chirik教授の研究室では元素周期表で鉄の隣にあるコバルトの研究も行っていたが、iPadやiPhoneなどのバッテリーに使われるようになり、鉄の副産物でゴミ同然だったのに価格が急騰したそうだ。また、ハーバー・ボッシュ法に代わるアンモニア生成法も研究しており、エネルギーの節約に挑戦している。これ、化学工業の基本的なプロセスだが、地球上のエネルギーの1%を消費しているそうだ。廉価な触媒を作るだけでは無く、廃棄物を再利用したり、エネルギーを節約したりするのが、教授の研究の方向性らしい。

*1日本では経済産業相がレアメタル確保戦略を立てており、その対象としてプラチナも含まれている。「重要な鉱種の代替材料開発等の推進」も行っている(経産省)。なお中国の2010年のレアアース輸出割当削減措置以前から取り組んでいる。

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