2010年12月21日火曜日

企業向けスマートフォンの主役がiPhoneになる

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よく『仕事に使える』かどうかでスマートフォンを論評している人がいるが、業務や職場に依存するので、論点が曖昧なことが多い。ただし一定以上の規模の事業所になると、セキュリティや業務アプリが要件を満たせるかなど、一般的な基準が決まってくる。

そういう大手金融機関などの『エンタープライズ』な利用者には、今まではRIM BlackBerryが人気があった。グループウェアへの接続性と、各種セキュリティ機能が充実していたからだ。しかしiPhoneもセキュリティー関係の機能が充実したので、RIM BlackBerryからiPhoneにスマートフォンを移行する事を検討している企業が増加しているそうだ(TECHWORLD, WirelessWire News)。

1. iPhoneのエンタープライズ向け機能の発展

消費者であれば、ユーザ・インターフェスの楽しさやレスポンスの良さが評価点になるが、エンタープライズ用途であるとセキュリティと社内システムへの統合が問題になる。当初のiPhoneにはエンタープライズ向けの機能は不足していたが、今では以下のように充実して来ている。

1.1. 認証・暗号化
現在ではiPhoneは主要なネットワーク暗号化機能はほぼ全てサポートしている。これにより、機密情報が『盗聴』されなくなる。ただし、IPsecやIEEE 802.1x認証に対応したのはiOS 2.0以降。
1.2. リモート・ロック
iOS 3.1以降、MobileMe経由で可能になった。紛失時に、不正利用やデータの閲覧を防ぐことができる。
1.3. 位置トラッキング
『iPhoneを探す』。MobileMeで実現されていたが、iOS 4.2.1以降は無料で使えるようになった。リモート・ロックと併用すれば、紛失時に探している間のリスクを減らすことができる。
1.4. リモート・ワイプ
遠隔データ消去。iOS 3.1以降、MobileMe経由で可能になった。紛失時に、データを削除することで、情報漏洩の可能性を単なるロックより減らす。バックアップを取ってあれば、iTunesからデータのリストアが可能。
1.5. 暗号化ファイル・システム(EFS
iPhone 3GS以降、ハードウェアベースのファイル・システムの暗号化が可能になった。紛失時のデータ閲覧を妨げる効果がある事になっている。安全性については強い疑問が持たれているが、他のスマートフォンに対する優位点とはされている。
1.6. パスコード暗号化
iOS 4.0以降は、保存されたメールと添付ファイルの暗号化に加え、サードパーティのアプリがiPhoneのパスワードと連動した暗号化を行えるようになる(Apple)。このデータ保護APIを用いておけば、紛失時にiPhoneが解体されても保存データが見られる可能性が減る。もっとも、そもそもパスコード解除が容易だと
1.7. 利用ポリシーの設定
パスワードと機能(e.g. Safari、YouTube、iTunes Store、アプリのインストール、カメラの使用)の利用ポリシーを設定する事ができ、Exchange Serverと連動することもできる(Apple)。
1.8. Microsoft Exchange Server
Exchange Serverは電子メール、予定表、連絡先などの管理・共有と、データ格納をサポートするサーバーで、今やエンタープライズ市場での地位は揺るぎなくなっている。使っている会社にとっては欠かせない情報共有ツールであるため、重要な導入条件となりえる。iOS 3.1以降でサポート。
1.9. iOSエンタープライズ(Enterprise)プログラム
2010年6月から業務アプリの開発が可能になった。Dun & Bradstreet番号が必要となる。社員数500人以上規模の企業や組織団体という条件があったが、2010年9月中に削除された。
iOSエンタープライズプログラムで、iPhoneらしい業務アプリの開発が可能になる。ほとんどの企業でカスタム・アプリケーションは動いているが、従来のiPhoneはそれはウェブ・アプリケーションしか許されなかった。

全般として紛失・盗難時のデバイス保護、つまりデータ流出の防止が強化されてきており、エンタープライズのIT担当者も、その点を評価しているようだ。概ね、RIM BlackBerryが勝る点もあるが、Androidよりはエンタープライズ用途に適しているとの評価とされている。

2. Androidは、BlachBerryやiPhoneに遅れている

Androidは標準で位置トラッキングや、暗号化ファイル・システムが利用できない。特にSDカード等のリムーバブルメディアでは問題になる(@IT)。エンタープライズ・セキュリティの観点からすると、iPhoneに劣っていると言わざるをえない。

ただし、Android 2.2からPolicy Management APIsが追加され、利用ポリシーの設定ができるようになり、Exchange Serverとの連動性が高まるなど、エンタープライズ向け機能の強化も進んでいる。また、電話会社のサービス、端末メーカーのカスタマイズ、サードパーティのアプリで独自に機能が拡充される。Android 2.0にはリモート・ワイプは無いが、Verizonが販売していたMotorola Droidはサポートを行っていたし、HTCはExchange Serverへの対応を強化していた。Norton Mobile Securityのようなアプリもある(InformationWeek)。

なおWindows Phoneは、セキュリティー関連の機能が充実していないため、エンタープライズ用途には向かないとされている(ars, COMPUTERWORLD)。

3. iPhoneにも弱点はある

iPhoneにも弱点はある。例えば、業務アプリの開発は泥縄式な事も多いため、AppStoreの認証プロセスが足かせになる場合もあるだろうし、Flexなどの業務アプリがFlashを使ったウェブ・アプリケーションである会社では、Flashが見られるAndroidの方が利用に適している。

またハードウェアの多様性が無いのも弱点の一つだ。ハードウェア・キーボードへのニーズ破損率の問題を気にするIT管理者も多いかも知れない。カメラ無しモデルが必要になる場合もあるであろう。戦地向けの軍用Androidが開発は報じられているが、軍用iPhoneは現状では考えづらい。

4. エンド・ユーザーはiPhoneを、管理部門はBlackBerryを好む

現状では、業務で扱う携帯電話の端末代金や通信費用をエンド・ユーザーに補助する会社ではiPhoneが人気になっており、管理部門がユーザーに端末を渡す場合はBlackBerryが主流のようだ。まだ、AndroidやWindows Phone 7は選択肢に入っていない。

利用者の人気からすると、今後しばらくはiPhoneの勢いが増していくと考えられ、管理部門主導でもiPhoneが選択されるようになっていく可能性が高いだろう。来年は『ビジネスマンはiPhone』になるのかも知れない。

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