2010年12月5日日曜日

大型船舶の排ガス規制が強化される

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船舶の排ガス基準が緩く、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、粒子状物質(PM)の発ガン性があり、喘息や心臓疾患の原因になる物質が大量に排出されていると問題になり、米国では既に規制が決定され、カナダはそれに続き、EUや英国でも議論が始まっているようだ(guardian.co.uk)。

1. 船舶は環境基準が緩い

船と自動車のエンジン・サイズと燃料の品質に基づいた海運部門内部の機密データによると、世界最大級の船がたった15隻で、世界中の7億6000万台の車と同じだけの汚染物質を排出していると思われるそうだ。低いグレードのバンカー燃料油は、米国や欧州で使われている自動車用ディーゼル燃料の、最大2,000倍のSOxを排出する。船舶は、重量に対するエネルギー効率は良く、自動車より少ないCO2しか出さないが、燃料消費量あたりの汚染物質排出量は圧倒的に悪い。

過去20年間で陸運ではSOxと窒素酸化物を劇的に減らしたのにもかかわらず、これらの大気汚染物質を除去する技術があるのにも関わらず、海運では厳しい法規制が反対されてきた。車は1万5000Kmで101gのSOxを出すに過ぎないが、世界最大の船のディーゼル・エンジン(85,790KW)を年間に約280日間運用したとすると5,200トンのSOxが発生する。

2. 中国の発展とともに汚染レベルが悪化

過去15年間で、中国の製造業が世界市場に出現してきた一方で、極端にコスト効率性が高い大陸間コンテナ船が開発され、船舶による汚染が拡大したらしい。この船は、陸上に建設された発電所と同じぐらい力が出るが、最も低い品質の燃料を用いる。

中国が原因というよりも、海運が盛んになる一方で、価格圧力が船主のモラルを低下させたのが原因な気もするが、船舶による大気汚染は近年の傾向のようだ。

3. 米国は規制を決定

2009年12月に、アメリカ環境保護庁(EPA)は、大気浄化法に基づき、アメリカ船籍の大型船舶について、エンジンや燃料の基準を強化する規則を最終的に確定している。2030年までに、ディーゼルエンジンを搭載した大型船舶からのNOx排出量を約120万トン、粒子状物質排出量を14万3000トン削減するとしており、カナダも米国に追随する見込みだ。また、アメリカとカナダは、両国の沿岸域数千マイルを大気汚染物質放出規制海域(ECA)に指定するよう、国際海事機関(IMO)に求めている(EICネット)。

4. 規制により劇的な大気浄化が見込まれる

規制に先立つ米国の学術的な調査では、米国だけで9万の貨物船の廃棄ガスが6万人病死を招いているとされ、肺と心臓の病気から年間の医療費は3,300億ドル増加しているとされる。米環境保護庁は、翌年から規制で設置される緩衝地帯が、NOxの80%、SOxの98%、PMの85%を削減し、この新たな環境大気質基準で、年間に8,000人以上の命が救えるとしている。デンマークでも同様の研究結果が出ており、英国では調査が無いが同じ傾向が予測されている。

5. 欧州でも規制が強化されるが、米国よりは緩い

欧州は最も海上交通路が忙しい地域であるが、過去20年間で陸運ではSOxとNOxを劇的に減らしたのにもかかわらず、これらの大気汚染物質を除去する技術があるのにも関わらず、海運では厳しい法規制が反対されてきた。車は1万5000Kmで101gのSOxを出すに過ぎないが、世界最大の船のディーゼル・エンジン(85,790KW)を年間に約280日間運用したとすると5,200トンのSOxが発生する。EUは2015年以降にSOxとNOxの規制海域を英国海峡とバルチック海に設ける予定だが、米国より緩い規制であるし、粒子状物質に対する規制はない。

6. 米国基準に追随するよう欧州に圧力

国連国際海事機関とEUには、米国沿岸に規制を課すという米政府が下した判断に追随するように圧力がかけられている。デラウェア大学の海洋政策が専門で、米政府に規制を推進したレポートの著者の一人のJames Corbett教授は、船舶による汚染は世界中の沿岸および内陸地域の人々の健康に影響を与え、世界の運送システムで最も規制されるべき部分の一つとして残されていると述べている。ヨーロッパの主要な環境大気質組織であるヨーテボリ大気汚染・気候事務局Crister Agrena氏は、健康と環境目標を達成するようにするならば、EUは米国と同様に沿岸の周辺に低廃棄ガス海域を必要としていると述べている。

7. 日本は・・・?

米国や欧州のECAに対応する方法の検討は政府でされているようだが、国内規制の強化に関しては、目立った動きは無いようだ。IMOの商船航行の頻度の図を見ていると、日本は最も汚染がひどい地域のはずだが、話題にはなっていない。

気候的に汚染物質が滞留したりしないのかも知れないが、どの程度の影響を受けているのかは気になるところだ。日本の海運の運輸部門エネルギー消費に占める割合は、2005年度で8%にしか過ぎない(資源エネルギー庁、自動車は約52%)が、米国や欧州の議論を見る限り、大気汚染に占める割合はもっと大きい可能性がある。

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