2010年12月12日日曜日

AndroidがiPhoneを押しのけて市場を制す

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Androidの勢いが止まらない。米国市場ではあるが、2010年第2四半期にはiPhoneとAndroidの販売数シェアは逆転し、利用者数シェアもcomScoreの調査で1.1%、Nielsenで5.2%までiPhoneに接近してきている。過去数ヶ月の傾向が続けば、来年初頭にはAndroidとiPhoneの立場が入れ替わる状況だ。

1. 問題にならなかったAndroidの欠点

米国市場でAndroidがiPhoneとの販売競争で上回ることができた理由は、iPhoneが十分に供給されなかった事、キャリアとハードウェアの選択肢が豊富であった事、iPhoneと比較したAndroidの欠点が問題にならなかった事があげられるであろう。

ここで言う欠点は、iPhoneとAndroidを比較した上での劣位な点で、UIのレスポンスが悪い(ぬるぬる動かない)、UIの一貫性が無い(e.g. 機種で異なるボタンの位置、端末メーカーごとの独自UI)、アプリケーションの数が少ない、バッテリーの持ちが悪い、iTunesの存在しないなどが言われていたが、売上に影響はしなかったようだ。

2. Androidの欠点は解消の方向

上で触れたAndroidの欠点、つまりiPhoneの相対的な優位性だが、ハードウェアやソフトウェアの改善、新たなサービスで差が縮まって来ている。

例えばSamsung Galaxy SやHTC Desireが出て、AndroidのUIの評判は改善した。UIの一貫性は課題として残るが、人気のモデル似に集約するとは期待できる。アプリの数も10万を超え、ゲームを除けば充実して来たと言えるであろう。音楽配信サービスも、iTunes Store以外、例えばAmazon MP3という代替サービスは存在する。

構造的に遅いアプリケーション・コードの実行速度も、Dalvik VMの高速化、ハードウェアの高速化、NDK(C/C++サポート)の充実で改善されている。特にAndroid 2.2以降はJITが搭載され、Android開発者のBLOGによると、前バージョン比2~5倍の速度向上がもたらされるそうだ。なお増加するメモリー消費量は、JIT自身に100KB未満の、それに加えて各プロセスごとに100KB前後の増加となっており、190MB~450MB程度のユーザー・メモリーが利用できるAndroid端末では問題は無い。

3. Android OSの優位性は今後も残る

Apple社の方針のせいか、Androidのアドバンテージが積極的にiPhoneに取り込まれる事は無いようだ。例えば欧米ではiPhoneは小さすぎるとの指摘もあるが、ハードウェア・キーボード付のiPhoneの噂は出たことが無い。

OSの機能でも、USBストレージ機能やウィジェットやアプリ間の連携機能(インテントとコンテンツプロバイダ)などがAndroidの利点としてあげられる。マルチタスクは後からiPhoneにも実装されたが、APIの拡張はアプリ側の対応が必要になるのは、多くのiPhoneユーザーが体感したはずだ。もちろん、FlashもAndroidの分かりやすい魅力となっているが、Apple社はFlashには否定的だ。

最も人気のあるプログラミング言語であるJavaでアプリ開発できるのもAndroidのアドバンテージだが、Apple社はObjective Cにこだわりがある。Javaは強い静的型付けの現代的なオブジェクト指向言語で、ケータイ・アプリやサーバーサイドを中心に開発者が多い。Javaだからではないが、Android SDKは、WindowsとLinux、Macintosh OS Xでも開発ができる。潜在的な開発者人口は、Androidの大きな優位性だ。

4. iPhoneの取り扱いキャリアが広がっても効果は薄い

米国ではベライゾン・モバイルがiPhoneを発売できれば、Appleが形勢を逆転できると主張している人もいる。実際に、ベライゾンで使えるCDMA版のiPhoneの開発の噂もある。日本でもNTT DoCoMoの取り扱いを期待する人は多く、またDoCoMoがiPhoneの取り扱いを交渉した痕跡はiPhone内に見られている。

しかし、2009年の前半であればiPhoneは絶対的な訴求力があったが、現時点では消費者はAndroidも認知している。iPhoneを取り扱うキャリアが広がった所で、Androidの勢いを止める事ができるかは疑問だ。また、供給問題を改善できなければ、キャリア拡大は意味がない。

5. 日本でも米国と状況は同じ

おサイフやワンセグの機能がiPhoneに搭載される見込みは薄い。おサイフ機能は、FeliCaと互換性のあるNFCをiPhoneが搭載する可能性はあるので、EdyやSuica等に対応すれば実現されるかも知れないが、Appleが日本市場に適応させる気があるかは疑問だ。NFCは通信方式の規格であって、Felicaで定義されているセキュリティーやデータ管理はサポートしない(NRI)。既存の改札などのリーダライタとの相互接続性を確保する必要もあるし、JRの『端末を裏返しても使用が可能』というような、他の事業者の基準もクリアする必要がある。

一方で、海外メーカーのAndroid端末や、国内メーカーのガラパゴスなAndroid端末が充実して来ている。今後の半年間で、米国で起きた状況が繰り返される可能性は高い。11月、12月のAndroidの販売数はIS03を中心に好調だ。さらに、新端末の発売が続くとAndroidがメディアに取り上げられる回数が増えるため、知名度が飛躍的に高まる可能性もある

スマートフォンの利用動向調査では、旧世代機のiPhone 3Gが8.1%、iPhone 3GSが22%のシェアを占めている。これらの既存ユーザーの囲い込みにApple社が失敗すれば、iPhoneの地位低下は大きいものとなるだろう。

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