2010年9月6日月曜日

ES細胞治療も、現在はオカルトで偽医療

このエントリーをはてなブックマークに追加
Clip to Evernote
Pocket

RNAi治療のように、最先端の医療技術が難病を救う可能性はある。しかし、治験が終わっていない治療方法は、例えそれがES細胞を使っていると称したものでも、オカルトの粋はでない。だが、万能細胞と言われる胚性幹細胞(ES細胞)を用いた治療を行っていると称している病院が存在し、患者が海外から詰め掛けるという事態が発生している。

1. 闇ES細胞治療がブーム

Mail Onlineによると、脊髄損傷、心臓疾患、パーキンソン病、糖尿病、自閉症、眼疾患などに有効と称される自称ES細胞治療は、£20,000(約217万円)以上の費用がかかるとされるが、詰め掛ける人は多いようだ。科学者は広く実用化されるまで15~20年かかると言っているが、ES細胞治療を行うと言う病院は大量に存在する。ドイツ・デュッセルドルフのXCell Centerと、中国・上海のBeike Biotechnologyが、自称ES細胞治療を行っている2大施設だ。ロシアでも治療が行われていると報道があった(WIRED VISION)。

2. 原因はメディアの「奇跡」の報道

このブームは、Daily Telegraphの記事が原因になったようだ。中国でES細胞治療を受けた盲目の2歳女児が、その後、視力を得たという内容になっている。ただし、治療と視力回復の因果関係を示す証拠は無い。

ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジのPeter Coffey教授と英国パーキンソン慈善基金のKieran Breen医師は、多くの患者やその家族がこの記事を信奉しており、ES細胞治療に反対すると彼らが気分を害したという経験をしたそうだ。

しかし、Coffey教授とBreen医師は、ES細胞治療が証拠は無く、ロシアで自称ES細胞治療を受けた脊髄損傷のイスラエルの少年は複数の腫瘍ができ、自己免疫疾患の46歳の女性は腎機能障害を煩い、敗血症で死亡したと述べており、とてもES細胞治療を勧められないようだ。

3. ES細胞を体内に注入することは、まず無い

偽ES細胞治療では、ES細胞を直接、患者の体内に注入している。しかし、これは非現実的だ。

ES細胞が、パーキンソン病や糖尿病の治療への応用が期待されているのは、ドーパミンを生成する細胞やインシュリンを作り出す細胞へ、変化させる事ができると考えられているからだ。つまり、ES細胞から別の目的の細胞(もしくは前駆細胞)を作り出し、それを患者に注入する必要がある。直接注入されたES細胞が、目的の細胞に分化するかは分からないし、むしろ腫瘍になりかねない。

4. 実験室レベルの研究は進んでいる

ブッシュ政権がES細胞に政府補助金をつけず、オバマ政権も乗り気ではないようだ(Telegraph Blogs)が、実験室レベルの研究は進んでいる。

パーキンソン病の治療への応用では、目的の細胞も生成できているし、既に動物実験は行われている。

5. ES細胞治療の臨床実験は全く進んでいない

2009年1月に、米バイオベンチャーがES細胞を応用した治療方法の治験を、世界で始めて開始すると報道があったが、2009年9月にはFDAが安全性を疑問視し中断したと報道があった(WTN News)。開発元が、2010年7月30日に、再度、治験が許可されたと発表している(Geron)ため、現在も治験が完了していない。2009年11月に報道があった、Advanced Cell Technologyの申請も、法的問題で許可されていない模様だ(Proactive Investors NA)。

6. ES細胞治療には拒絶反応があるが、それをクリアする代替技術が出現している

ES細胞治療は、激しい拒絶反応が予想される。患者にとっては、他人の遺伝子を持つ細胞であるからだ。そして、拒絶反応が少ない治療法につながる技術が、開発されつつある。

2006年8月にES細胞とほぼ同等の機能を持ち、人工多能性幹細胞(iPS細胞)がマウスの細胞で発明され、2007年11月には人間からもiPS細胞の生成が可能になった。患者の体から作るiPS細胞は、拒絶反応が起きないと考えられている。人の受精卵を使うES細胞は倫理的に議論があるが、iPS細胞には、この問題も無い。

臓器再生技術も急激に進歩している。ラットで行っている状態だが、心臓や肺を人工的に再生することも試みられており、初期段階の成果は出ている。これらの技術も、患者の体の細胞を培養しており、拒絶反応が起きないと考えられている。

7. ES細胞の研究成果を、iPS細胞で実用化?

2009年1月に、パーキンソン病患者からiPS細胞を作成できたという報道があった(47NEWS)。既にラットでは、2008年4月にiPS細胞でパーキンソン病の治療が成功している(読売新聞)こともあり、実用化への期待が高まった。人でもドーパミン生成細胞に分化できれば、倫理的問題と拒絶反応の問題をクリアした治療法として使う事ができる。学術的にES細胞の研究は重要なのだが、実用化という面ではiPS細胞への方が現実的であるようだ。

2 コメント:

ぶぐり さんのコメント...

幹細胞点滴療法は怪しいクリニックがやってることが多いけど
顆粒球コロニー刺激因子を注射して幹細胞を血液中に動員し組織を再生する医療は正規の医学でも成果を上げ始めてる。
体内で起こることは同じだから幹細胞点滴療法も効果はあるでしょう。
幹細胞点滴療法も、北海道の大学で心臓かどこかの組織の再生に成功したってニュースを読んだ記憶あるし。
無茶しなければ安全性は高いので、見切り発車でどんどん取り入れるべきです
患者の時間は限られているんだから

uncorrelated さんのコメント...

>>ぶぐり さん
コメントありがとうございます。

> 顆粒球コロニー刺激因子を注射して幹細胞を血液中に動員し組織を再生する医療は正規の医学でも成果を上げ始めてる。

ここの部分のソースを御提示いただけ無いでしょうか?

コメントを投稿