2025年2月27日木曜日

デジタル庁の言う「ベンダーロックインの回避」では、アプリケーションのポータビリティが確保されず、外資系に自治体システムが呪縛されかねない件

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デジタル庁はガバメントクラウドに熱心なのだが、現時点での自治体システムのガバメントクラウドへの移行は、実質的にAWSなどの外資系クラウドサービスにサーバー周りのインフラを移行を意味している。クラウドサービスはグローバル寡占市場であり、価格や品質に問題が生じた場合の代替策はオンプレミス回帰だ。

ところがデジタル庁はベンダーロックインに関して、

3.3 ベンダーロックインについて

データの移行性が担保され、合理的な価格体系が公開された上で、その導入プロセスも含めて透明性が担保されている等の条件を満たすクラウドサービスを選択することにより、CSP(注意:クラウドサービス提供者) によるベンダーロックインを回避すること。

としている*1。アプリケーションのポータビリティの確保が意識されていない。

デジタル庁の考え方でクラウド移行すると、オンプレミス回帰でアプリケーションの全面改修が入ってしまう可能性がある。デジタル庁クラウドチームが強く推奨するサーバーレスなモダンなクラウド利用を目指す場合、クラウドサービス事業者の独自サービスに大きく依存する部分が出かねない。

ソフトハウスが提供するパッケージを利用する場合は、注意喚起しなくてもソフトハウスがロックイン回避を考えているとは思うが、受託開発色が強いシステムの場合は、自治体の発注どおりのモダンなクラウド利用をしてしまい、身動きが取れなくなる可能性がある。AWSの価格体系からすると、AWSに依存したモダンなソリューションの方が費用が安くなる。

だが、ロックインしたモダンなクラウドがオンプレミスに勝る経済性があるかは分からない。欧米の最近のベストプラクティスは、初期はクラウドで構築し、規模が大きくなって安定したらオンプレミスに移行してコスト削減で、当初から移行に配慮したアプリケーションの作成が望ましいとされる*2。自治体の基幹システムは人口減少でデータ蓄積ペースは落ちていくとは思うが、何十年とかかるペースであるし、急激に規模が拡大することも予想し難い。

クラウド基本方針は「現在改定作業を進めており、年内*3に改定を行う予定」らしいのだが、オンプレミス回帰に備える、それを実施する基準についても指針を定めておいて頂きたい。外資系サービスのお友達に、利益を誘導しないといけないわけではないはずなので。

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