2011年4月7日木曜日

シェールガスで原子力を代替できる?

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反原発派の好きな再生可能エネルギーは、少なくとも10年間は原子力の代替になりえない。特に太陽光や地熱は、最低でも何十年か経たないと技術的課題を克服できそうにない(闇の勢力と夢の発電技術太陽光発電の素晴らしい点、不足している点)。

結局、現実的に大量に利用可能なのは火力で、その中でも液化天然ガス(LNG)がメディア等でも注目されている。最近は、火力発電所などはLNGを主に使うようになっており、特に目新しい資源ではないが、技術進歩で可採埋蔵量が大幅に増えたためだ。

しかし、LNGでは根本的に問題は解決しないので、遅かれ早かれ原子力エネルギーの利用をせざるを得ない状況だ。中国等の新興国の旺盛なエネルギー需要でLNGの需要も急激に増えているからだ。そして、LNGでもCO2の排出はあるため、LNGに依存するとCO2の削減目標を達成するのは不可能になる。

1. 可採埋蔵量の急増

2000年代に入り、技術革新によって従来は採算に乗らなかったタイトサンドガス、コール・ベッド・メタン、シェールガスでの採掘が経済的になり、LNGの可採埋蔵量が急増した。

これら非在来型天然ガスは、従来のパイプで吸い上げるだけの採掘方法では、液体の浸透率が低い非在来型天然ガスの採掘は難しかったが、水圧破砕法など採掘方法が大幅に改善した。

ロシアを抜いて米国がLNG最大生産国になるなど、状況を大きく変えている。北米の天然ガス生産の44%を占めるまで至った(JOGMEC)。

2. LNG価格は下落傾向

非在来型天然ガスの発掘は、北米だけではなく全世界で可能であるため、可採埋蔵量が大きく増加する事になり、LNG価格の上昇を抑える効果がある。

以下は米市場での生産者販売価格の推移だが、LNGの価格は乱高下するものの、原油ほどは大きな変化は無い。むしろリーマン・ショック後は2003年の水準に戻っており、原油よりも割安感があるエネルギー資源だ。

追記(2011/06/14 17:42):日本のLNG輸入価格は、米国ほどピーク時より値下がりしていない。2011年1月でピーク比71%、2011年5月で86%で、2004年の41%の水準よりは2倍近く高くなっている(JOGMEC, 天然ガス価格の推移)。

3. LNGの需要は堅調

LNGは原油に比べると、排ガスがクリーンでCO2を6割しか排出せず、政治的動乱がおきやすい中東地域に依存しないため有用な一次エネルギーだと考えられている。利用にインフラが必要なため、開発途上国ではあまり利用されない傾向があるが、近年は新興国での需要が急激に高まっている。

見ての通り中国は10年間で293%、インドは148%、世界的にも25%の需要増となっている。原油価格の高騰により一次エネルギー資源として代替需要が高まっていくと考えられ、JOGMECが石油メジャーに行ったアンケート調査でも需要は堅調だと予想されている。

4. 天然ガスは原子力の代替になるか?

天然ガスは、原子力の代わりにはならない。

天然ガスの可採年数は66年と言われ、非在来型天然ガスを加えると飛躍的に埋蔵量が多くなると考えられているが、長期的には資源量として十分ではない。新興国の人口を合計すると、約30億人となる。先進国の4倍以上の人口が急激にエネルギーを消費しだしており、原子力抜きで現在のペースで経済成長をされると、需要が供給を大きく上回る可能性が高い。

また、石油ほどではないが、天然ガスもCO2を排出するため、原発からLNGに代替するとCO2排出量が増加する。政府は震災後、2020年までのCO2排出1990年比25%(2007年比34.3%)削減目標を見直しを示唆したところ、国連から明確に反対されたようだ(読売新聞)。

5. 原子力を推進するべき理由

高速増殖炉が実用化されれば、可採年数が50年であるウランを有効に活用できるようになるため、ウランの利用可能年数が数百年から数千年になると言われている。中国やインドの人口を支えるに足りる潜在資源量となる。原発を推進することで、これらの国とのエネルギー資源獲得競争を回避する事ができる。

また、多くの天然ガスがロシアに埋蔵されており、北方領土の問題をはじめ政治的なリスクを少なからず抱える。リーマン・ショック以降、LNG価格の下落を受けたロシアが、政治的態度を軟化させたという分析もある(JBpress)。裏を返せば、LNG価格が上昇すると、ロシアの政治的圧力が増す可能性がある。

潜在資源量、地球温暖化問題、地政学的なリスクを考えると、天然ガスに依存できないのが日本の現状だ。天然ガスは有用な一次エネルギーであって、今後も原油を置き換えていくと考えられるが、大きく依存すると問題を抱える事になる。

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