政府は福島第一原発の半径20Km圏内を避難指示区域から、法的に立ち入り禁止とする警戒区域へ切り替える方針だ(asahi.com)。
地域住民からすると妥当性を欠く方針に思える区域設定に感じる。警戒区域に指定されると、地域住民も厳しく区域内への立ち入りを制限される。空き巣狙いの人間を強制排除するなどの目的は評価できるが、文部科学省が発表した「20km圏内空間線量率測定結果(4月18日~19日)」からは、妥当性を欠く区域設定と言わざるを得ない。
1. 10Km以北、15Km以西、15Km以南は放射線濃度が低い
以下は、文部省が出した地図を、2μSv未満、5μSv未満、10μSv未満、50μSv未満、それ以上で色わけしたものだ。国際基準では2.28μSv/h未満は安全とされる。つまり、10Km以北、15Km以西、15Km以南は放射線濃度は、計画的避難区域より低い。現在の福島や郡山と同程度の放射線濃度だ。住民の被曝量が問題であれば、避難指示区域の指定すら妥当性を欠くのは明らかだ。
2. 災害直後と一ヶ月後は違う
事故直後は状況の悪化も考慮し、また風向きなどの不確実性を避けるために、半径20Kmの一律避難はやむを得ないと思う。
しかし、放射性物質の流出が停止しており、空気中の塵に含まれる放射性物質がほとんど無くなった現在では、放射性物質の計測濃度に基づかない警戒区域の設定はナンセンスに感じる。
3. 一貫性が無い避難基準
政府は、年間で20mSvの被曝量を超える地域を計画的避難区域に指定しており、飯館村を指定した。その是非をともかくとして、被曝量20mSv/年以上という、危険地域の基準を設けたわけだ。時間換算にすると、2.28μSv/hなので水色箇所は政府基準でも安全と言う事になる。2.28μSv/h未満の放射線濃度を警戒区域に指定した理由は、説明無しでは理解できない。
4. 50μSv/hの地域に一時帰宅していいの?
防護服着用なので問題ないという考えなのかも知れないが、地図を見る限り一時帰宅可能な原発3Km以遠の場所で、50μSv/hを超える地点がある。3時間程度ならば健康に大きな被害があるとも思えないが、0.9μSv/hの場所と同じ扱いなのは理解に苦しむ。
5. 安全基準を示す必要がある
人口密集地域ではないが、何万人もの住民が一ヶ月以上も不自由を強いられている。どういう状態で帰宅が可能になるかについて、政府は目処を示していない。
枝野官房長官は、安全を優先させたと説明しているが、何に対する安全確保なのかは明確ではない。もし原発災害は進行中で、さらに放射能汚染が悪化する可能性があると言うならば、それを説明すべきであろう。冷温停止になる半年以上先まで、帰宅の目処が無いことがわかるからだ。
6. 情報統制は民主制度に反する
避難区域の設定に関しては、初動はともかく、最近になって菅内閣の不透明性が目立つ。3月30日~4月2日の放射線濃度の測定値も官邸指示で公表を控えていたと、文部科学省は明言している(産経)。スターリン時代のソ連ではないのだから、情報統制によって国民を統治しようとする姿勢は、厳しく批判されるべきだ。この点においても、官邸は詳細な説明を行う必要がある。
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