2011年4月20日水曜日

飯館村の放射能汚染の現状

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松本健一内閣官房参与の発言が議論を呼んでいる。社民党は「まるで評論家みたいだ。」と批判しているが、松本氏は評論家なので、その通りなのであろう。当面、人が住めないにしろ、基準やデータを示すべきだ。これは政府の計画的避難区域についても言えている。

計画的避難区域に関して、その基準を政府は明らかにしていない。情報公開への姿勢を批判される政府だが、データの公開水準は高いが、判断基準を明示できない所に問題がある。そして、計画的避難区域に関しては、データ的に避難の必要性に疑問がある。飯館村のデータから、計画的避難の必要性を考えてみる。

1. 空中放射線濃度は低下

屋外の放射線濃度に関しては、3月18日の30.0μSV/hから、4月14日の5.9μSV/hに減少している。減少幅は低下しつつあるものの、放射能の大半を占めるとされる放射性ヨウ素の半減期は8.1日と短く、放射性セシウムとその化合物は水溶性であるため、今後も放射線レベルは低下していくと考えられる(チェルノブイリで放射性セシウムの残留が問題になってはいるが、飯館村は年間降水量が5倍以上ある)。

なお、現在の空中放射線濃度の減少傾向が続くとすると、3月17日から31日にかけての被曝量は、4月1日から1年間に受ける被曝量よりも多くなる。3月17日から4月30日までの被曝量は、その後1年間の9倍になる。のんびり計画的に避難していていいのであれば、そもそも避難しなくて良い。

2. 水道水の放射性物質は消失

一時、問題になった水道水ではあるが、現在では放射性ヨウ素も、放射性セシウムも観察されていないようだ。例えば、滝下浄水場では、3月20日から4月1日の間に放射性ヨウ素が92.38%減少し、現在では観察されていない。放射性セシウム(137Cs)が、4月1日に12.1Bq/kg観察されたが、現在は計測されていないようだ(福島県)。飲料用井戸水からも放射性物質は検出されていない(福島県)。

雨天などで状況の変化はありえるが、政府が飯館村にそのリスクが強くあるとしているわけではない。

3. 土壌の放射性物質は増加

一方で、土壌中の放射性物質ではあるが、一部の地域でレベルが上昇しているようだ。

4月6日と12日を比較すると、飯舘村前田の水田は放射性セシウムが20%減少しているが、長泥の水田は放射性セシウムが92%増加している(福島県(4/6)、(4/12))。Google Earthで地形を確認すると、山間部の村なので周囲から放射線物質が流入し、4月18日までは雨量が少なかったので流れ出ていかないためではないかと思われる。

追記(2011/4/21 16:00):文部科学省の飯館村長泥のデータは、ヨウ素は有意に減少しているが、統計学的な有意性は無いが、セシウムは増加しているように見える。

4. 専門家は人が住むのに適していないと主張

京大原子炉実験所の今中哲二助教は、現地の調査の上で「人が住むのに適したレベルではない」と指摘し、汚染が深刻であるとしている。今中氏は三ヶ月居続けた積算被ばく量は100mSVに達し、原子力安全委員会の防災指針で『避難』とされる50mSVを超えると警告している(北海道新聞)。

5. 飯館村村長は、避難措置の妥当性に疑問を呈する

東洋経済に飯舘村・菅野典雄村長のインタビュー記事が掲載されていた。計画的避難に対する疑問が述べられている。まとめると、以下のような主張になる。

  • 避難によって、飯舘村の経済活動が停止し、地域の生活が破壊される。
  • 経済的困窮によって、地域住民の健康面や精神面に悪影響が及ぼされる。
  • 政府は責任を負うとしているが、風評面もあり、避難にともなう損害は補償金では解決しない。
  • 現在の放射線濃度で人体に危険が出るリスクは明確ではない。
  • 避難基準が流動的に変化している。当初、許容可能な累積放射線量は年間100mSVだったが、50mSVから20mSVと基準値が低下しており、それに対する説明も無い。
  • 村全体が強い放射線濃度ではなく、低い部分もあるため、避難以外の対策も可能。

現在の放射線濃度では、避難をする必要性を感じられないと言うのが、飯館村村長の主張だ。政府は、それに対して十分な説明ができているわけでない。

6. 村民全員を避難させる必要性があるのか?

実際に明確なデータがあるわけではないが、低レベルの被曝でも、妊婦や子どもに影響が大きいと信じられている。政府内部で、その考えを踏襲しているのであれば、妊婦や子どもの緊急疎開を実行すれば良いのであり、成人男性などを疎開させる必要性は無い。村全体で避難を行う理由を、政府は説明していない。

7. 政府基準の不透明さ

5月上旬までに避難という、のんびりとした避難命令の根拠は、明確に提示されていない。場合によっては国費を使う事になるわけで、データ自体は取得・掲載されているので、計画的避難の根拠となっているはずだが、政府内部でどのように解釈を行ったのかの公開は必要だ。

空中放射線濃度の低下は今後見込めなくなったとか、雨天で土壌の放射性物質が飲料水に流入する可能性があるとか、色々な解釈は可能だと思うのだが、提示されたデータそのままでは、のんびり避難の妥当性を説明しているとは言い難い。土壌等等の汚染レベルのデータの変化によっては、また方針が変わるのかも知れないが、根拠が明確になっていないと、混乱がさらに増してしまう可能性は高い。

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