AFPが「再生可能エネルギーへの取り組みで知られるスペインの3月の電力供給で、風力発電の占める割合が前年同月比5%増の21%に達し、初めて最大の供給源になった」と報じているが、統計上のトリックがあるので指摘したい。
つまり、風力発電のシェアが最大になるように分類が調整されているため、風力発電の占める割合が最大となっている。
1. 補正版スペイン電力供給源シェア
スペイン風力発電協会(AEE)の資料がそうなっているのだと思うが、LNGを主に利用するコジェネレーション・システムが独立した項目として取り扱われているため、LNGの比率が低くなっている。IEAの統計では合算されているため、それにあわせると以下の表ようになる。
発電方式 | 2011年 3月 |
2008年 | 変化 |
---|---|---|---|
LNG+コジェネ | 32.2% | 38.7% | -6.5% |
風力 | 21.0% | 10.3% | 10.7% |
原子力 | 19.0% | 18.8% | 0.2% |
水力 | 17.3% | 8.3% | 9.0% |
石油・石炭 | 12.9% | 21.7% | -8.8% |
太陽光・熱 | 2.6% | 0.8% | 1.8% |
輸出分 | -3.4% | -3.5% | 0.1% |
ロス | -1.6% | -4.8% | 3.2% |
2011年3月の値はReuters、2008年の値はIEAを参照した。2008年の通年のシェアと、2011年3月のシェアを比較しているので、季節変動による影響があるので注意されたい。
液化天然ガス(LNG+コジェネ)と石油・石炭への依存を減らしつつ、風力と水力の普及が進んでいる事が分かる。しかし、化石燃料、特にLPGへの依存度は、まだ一定のレベルがあるのが現状だ。風力が一番だと言うのは、統計上のトリックであることが分かる。
2. 再生可能エネルギーの普及促進を図るスペイン
スペインはLNGガスへの依存度が高く、その依存度を減らす為の政策として、再生可能エネルギーが促進されている。買取価格にプレミアムが設けられており、再生可能エネルギーを用いる発電所の建設後は10年間、生産税額控除を受けられる。
風力発電のシェア20%は驚くべき数字だ。立地に適した地形が多いのであろうが、政策誘導の効果が高い事が分かる。また、水力発電の比率が17.3%と高い点も見逃せない。これは小水力発電の普及に力を入れている事が理由のようだ。
これらの結果として化石燃料への依存度45%に低下しており、60%前後の日本よりも低くなっている。なお、国内向け電気料金はユーロ圏では7番目に高いが、平均よりは低い(SPAIN BUSINESS)のだが、財政負担が深刻化しており、再生可能エネルギー向けの補助金は削減傾向にある。
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