アクシデントによる臨時検査であれば、見通しが立たない事は多々ある。しかし、定期検査がいつ終わるか分からないのは問題だ。
ところが、原発の定期検査には「国民感情が収まる」事が入っているらしい。検査時間の見通しが立たないばかりではなく、検査時間が安全性に寄与していない事を意味する。
東京電力の清水正孝社長が、2007年の新潟県中越沖地震で被災した柏崎刈羽原子力発電所で今も停止中の2~4号機のうち、3号機について、「運転再開に向けてできるだけ早く、年内には手続きに入りたい」と発言した事に対して、地元の反発が高まった(読売新聞)。そして、柏崎刈羽原発所長が「定期検査をいつまでに終えるといった工程ありきの発言ではない」と、運転再開を急がないとコメントした(産経ニュース)。
地元感情を考慮しない清水社長への批判が集まっているが、柏崎刈羽原発所長の発言の方が異常だ。検査は検査項目を確認するものであって、定期検査は検査項目をこなせば終わりになる。原発は安全のためにマニュアル化が進んでいるので、定期検査に必要な時間は目処が立っているはずだ。つまり、柏崎刈羽原発所長は、原発が定期検査を終えられないのは、国民感情が理由だと言っている。定期検査の項目に、国民感情の沈静化が入っているのは、異常としか言いようが無い。
国民が不満を忘れるまで待機していると言うのは、安全性を向上させる事なく、稼働率を低下させているだけだ。近年の米国の原発稼働率は90%で、日本の稼働率が60%台となっている(戒能(2009))。稼働率の低下は経済性を悪化させ、中身の無い検査は安全性を向上させない。
原発に対して求められているのは、適切な検査項目と厳密な検査遂行であって、悪戯に時間をかける事ではないはずだ。トラブルが発生したら、そのトラブルにいかに対処するか方針を定め、それを実行して説明すればよい。政府や電力会社の「定期検査」に対する姿勢には、疑問を感じる。
2 コメント:
所長は本当に「定期」検査....と発言したのでしょうか? 3号機が止まっているのは、定期検査の為ではありません。 2007年の中越沖地震でスクラムし、その後、全号機に対して耐震強化工事とその後の健全性試験を行っているために止まっているものです。
正常にスクラムした事と、圧力容器や格納容器に全くダメージがない事はイコールではありませんから、その意味ではスケジュールが決まっている定期検査とは違う検査が行われています。(耐震化工事にしても、2/4号機は「何年何月何日~」というように、終了のスケジュールは発表されずに進行しています。 ) 5号機の耐震強化工事の終了が22年1月14日で、健全性確認試験の終了が23年1月24日で一年余りかかっています。3号機の工事終了が23年1月31日ですから、健全性確認試験に1年以上かかることはあり得るわけで、試験が途中であるにもかかわらず、それが必ずパスすることを前提にした社長の発言こそがフライングだと思います。
>>kizaさん
コメントありがとうございます。
> 所長は本当に「定期」検査....と発言したのでしょうか?
ソースでは「定期」となっていますが、確かに停止に至る経緯から考えると、奇妙な感じもしますね。
技術的に工程を完遂する見込みがないと言う事なら、不思議はありませんが、そうすると東電内部の情報管理に疑問が出てきますね。、
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