2011年3月31日木曜日

太陽光発電の素晴らしい点、不足している点

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原発事故後、それを代替できる再生可能エネルギーとして太陽光発電が、インターネット上では注目を浴びているようだ。

太陽光発電には様々な利点があるのは確かだ。しかし、火力や原発力を代替するのが難しい面もある。政府はエネルギー政策の見直しを示唆しているが、太陽光発電は有料な代替手段にはなりえないであろう。

現状の太陽光発電技術の特性をまとめてみた。

1. 埋蔵資源による制約が無い

シリコン等のありふれた材料で、太陽光というありふれたエネルギーを、電力という利用しやすい形態のエネルギー資源にできる。原油やLPGガスは、地政学的な要因で供給量や価格を左右されやすく、日本にとっては政治リスクが大きい資源だが、太陽光発電には政治リスクは無い。

2. CO2をほとんど排出しない

以下は1kWhあたりの発電方式別のCO2排出量(g-CO2/kWh)をまとめてみたものだ。電力中央研究所報告(2010)の表から作成している。シリコン結晶の生産にエネルギーが必要なためか、他の再生可能エネルギーと比較すると二酸化炭素排出量は大きめだが、火力に比較すると圧倒的に少ない。

1kWhあたりの発電方式別のCO2排出量(g-CO2/kWh)
発電方式 発電燃料 その他 合計
水力(中規模水路式) 0 11 11
地熱 0 13 13
原子力 0 20 20
風力発電 0 25 25
太陽光 0 38 38
LNG火力(複合1500℃) 341 89 430
LNG火力(複合) 376 98 474
LNG火力(汽力) 476 123 599
石油火力 695 43 738
石炭火力(600℃) 810 71 881
石炭火力 864 79 943

3. コストは低下中

太陽光発電の発電コストは、楽観的な見通しでは2020年前後に火力発電所のコストを下回る。2005年で46円/kWh以上のコストがかかると言われていたが、着実にコスト低減はしている。経済産業省は、2011年現在で42円/kWh以下を想定しているようだ(ECO JAPAN)。

産業用太陽光発電システムのデータだが、平成17年度NEDOフィールドテスト事業平均値にあるコスト構成は太陽電池42%、パワコン11%、工事費35.2%、その他11.5%となっている。この中で、太陽電池価格は急激とは言えないが確実に低下してきている。

現在、日本の三分の二を占める発電用エネルギーである原油やLPGなどの急激な価格上昇を考慮すると、コストが低下傾向にある太陽光発電は、今後は経済性でも期待できるようになる。

4. 潜在的な発電量が少ない

現在の日本では、家庭向け発電システムとして太陽光発電は普及してきている。国内出荷の電力用ソーラーパネルの81%は住宅向けだ(太陽光発電協会)。しかし、全ての一戸建に家庭用太陽光発電システムを設置しても、2008年の総電力需要の10%程度しか補うことができない

家庭用太陽光発電システム(3.29~4.3kW)の予測年間発電量の平均は4,234kWh(メーカー別、地域別の年間発電量比較)に過ぎない。住宅・土地統計調査によると2008年の一戸建は27,450,000軒(共同住宅を含む住宅総数は57,586,000軒)。全ての一戸建住宅に家庭用太陽光発電システム(3.29~4.3kW)を設置すると、116,220GWhの発電量となる。

2008年の年間総需要は1,082,014GWhなので、家庭用太陽光発電の潜在資源量は総需要の10.7%に過ぎない。集合住宅を加えても一軒あたりの屋根面積が少ないため大きな変化は無いであろうし、むしろ日照条件が良好でない一戸建住宅もあるので、これより少ない発電量しか見込めないであろう。

5. 変換効率の大幅な向上は期待できない

市販品の太陽電池モジュールの変換効率が向上すれば、潜在発電量を高める事ができる。現在の原子力を代替するには3倍、火力を代替するには6倍の変換効率が必要だ。

以下は、産総研から転載した、各種の太陽電池の変換効率の進歩を表したグラフだ。10年単位で見れば随分と変換効率が改善されているが、急激に上昇しているわけではない。最も変換効率が高い単結晶Siの太陽電池は、15年間で25%程度の改善しかしていない。

6. 太陽光発電ファームも立地条件が厳しい

大規模な太陽光発電ファームを建設すれば、量的に発電量を増やすことができる。ドイツでは手厚い補助金を背景に、廉価で経済性の高いFirst Solar社のテルル化カドミウムを用いたソーラーパネルを用いた太陽光発電ファームが建設されており、全電力供給の3%程度を太陽光発電が占めている。

しかし、現在の太陽光発電ファームは、設置面積あたりの発電量は少ない。2009年12月に稼動開始をした、Lieberose Solar Parkは126haの土地で70万枚のソーラーパネルを使用し、53MWの発電能力を有する。福島第二原子力発電所は、約150haの敷地で4400MWの発電能力を有し、品川火力発電所は約10haの敷地で1140MWの発電能力を有す。太陽光発電ファームの敷地あたりの発電効率は、原発の70分の1、火力発電所の270分の1にしか過ぎない。

First Solar社の製品は、1W当たりの製造コストを$1未満と安いが、変換効率は10%程度にとどまっている。コストを度外視して変換効率30%程度のソーラーパネルを利用すれば、設置面積あたりの発電量を向上できると思うかも知れない。しかし、3倍になったところで原発の23倍の敷地を必要とするため、問題は改善はするが、解決しない。

7. 発電技術にはコストと同時にボリュームが重要

太陽光発電の現状をまとめると、コスト的には改善が見込まれ、二酸化炭素排出量も少ないのだが、見込まれる発電量が絶対的に少ない。電力消費量が多い日中に発電量が大きいが、夜間は全く発電できないなどの特性もあるので、火力発電や原子力発電を代替できる可能性は低い。

コスト改善とともに太陽光発電は普及していくと考えられるが、現状ではエネルギー政策の根幹を担う見込みは無い。もちろん、技術革新で変換効率の大幅な向上が達成されれば、状況は一変する。しかし現状のエネルギー政策として太陽光発電を中心に置く事はありえない。

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