今回の原発災害の報道では、状況の変化がわかりづらい。各地の大気、浄水場、土壌などから放射性物質が観測されている事から、汚染範囲が拡大しているのはわかるが、福島第一原発敷地内の定点で放射線濃度が記録されていないせいだ。
常設してあるモニタリング・ポストが地震による影響で故障したため、福島第一原発内の放射線濃度は外部からは分からない。しかし、東京電力からは、3月11日21時からモニタリングカーによる正門もしくは正門付近でのγ線と中性子の測定値が公開されていた(東京電力)。
ところが3月16日14時から、21日18時まで、正門の放射線濃度の測定値は公開されていない。時系列データの欠損は、後日の状況の検証を難しくするので好ましくない。
1. 正門計測データの空白
以下は16日までの計測値をまとめたグラフだが、現場でのアクシデント発生の影響を見て取ることができる。3、4号機の使用済核燃料プールの発熱が重大な問題を引き起こしている可能性が強い。
以下は21日18時以降の計測値をまとめたグラフだが、たまに放射線濃度の上昇が見られるものの、全般としては200μSv/hで安定していることが分かる。これは一時よりはかなり低い水準で、災害当初から見るとそれなり高い水準だ。ただし、水たまりなど一定量の放射性物質が原発内に滞留している事は報道されており、意外性はない。
気になるのは、21日18時台の最大値1,105μSv/h、19時台の1,201μSv/hだ。放射線漏れが悪化しているので目立つ数字ではないが、16日14時の2122μSv/hが徐々に低下してきたものか、その直前に何かが起きたのかは気になる。18日10時に2号機タービン建屋地下1階で500,000μSv/hが計測されており、17~20日は原発全体で放射線濃度が高かったのかも知れない。
なお、17~20日は正門に代わり、西門と事務本館北の計測値が公開されていたのだが、データに継続性が無い。
2. 推測のつかない理由
3月16日14時から、21日18時まで観測地点を変更した理由は想像がつかない。観測者の安全確保が理由であれば、事務本館北は18日に5,055μSv/hを計測しており、21日16時30分も2,015μSv/hと高い水準に留まっているので、むしろ危険な地点で観測を行っていておかしい。テクニカルな理由で正門が不適切と言う事であれば、21日以降の観測地点が正門に戻っている理由が説明つかない。復旧作業上、モニタリングカーが邪魔になるなどの理由でもあったのであろうか?
現場で時系列データの取り扱いが分かっていないはずがない。16日15時から急激に正門の放射線濃度が上昇し、それを東電が隠蔽したかったので計測を取りやめたと説明されれば納得がいくぐらいだ。しかし隠蔽体質と批判される東電(産経ニュース)だが、この空白の計測期間については、マスコミの関心は薄いようだ(17日に産経ニュースで報道があったため訂正)。
2 コメント:
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110317/dst11031708040010-n1.htm
こういうことのようですよ。
正門で高いのにそれより炉心に近い場所で作業してる人たちはどうなっているのか非常に心配。
>>Tさん
コメントありがとうございます。
放射性濃度が高くて西門に観測地点を移さざるをえなかったと報道があったのですね。事務本館北の方が放射線濃度が高そうなので疑問は残るのですが、本文を修正しておきます。
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