2020年3月12日木曜日

フェミニストの皆さん、性差の存在を認めることは直ちに現在の性別役割分担を正当化するわけではないですよ

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トランスジェンダーに親和的なフェミニストの誤謬推理を、社会科学初学者のアライさんが紹介していて気になった*1。曰く、男性と女性というジェンダーが遺伝的に決定されると言う思想は、男性と女性の社会的役割を生物学的決定論で説明することにより、社会的役割を変更不可能な結果と考えるものだから、フェミニストは受け入れるべきでは無いそうだ。

遺伝的に男性と女性が異なるからと言って、その違いが現在の男女の社会的役割が合理的だと示すものだとは限らない。技術進歩などで合理的な性別役割分担も変化するし、そもそも歴史的経緯*2や単なる偏見の結果であった可能性もある。また、性差があるからと言っても大抵は統計的なものなのだから、個々の女性の幸福追求の自由を縛る理由にはならないので、画一的な性別役割分担は問題になる。

社会運動の都合で、ジェンダーギャップを男女の能力や選好の差に帰着されたくないというのは分からなくもないが*3、制度や慣習といったミクロ的な事例を注意深く追いかけていき、女性差別と見られるものを見つけて改善を迫ることは可能だ。「ジェンダーギャップの幾分かは生物学的に説明されるのかも知れませんが、社会的な問題もまだまだありますよ」と言う主張はできるわけで、ジェンダーを遺伝的に決定したからと言ってフェミニズムが不可能になるわけではない。むしろ、遺伝的な男女の選好の違いを認めた上で、男性向きの競争社会を女性向きに修正することを模索する方が、女性の利益に適うかも知れない*4

ところで「現在においても(学界に身を置くレベルの)反トランス・フェミニストは普通に存在している」とは書いてあるが、反トランス側の主張、ほとんど抑えていない気が。トランス女性を女性に分類すると、性暴力対策*5、奨学金、選挙や役員などにおける女性枠の競争が厳しくなり、統計が汚染されてシス女性の問題が分かりにくくなるなどの不利益が、シス女性に生じると哲学者のキャスリーン・ストックさんが指摘していたりする*6のだが、この辺も詳しく紹介・反論して欲しかった。実際、女子のスポーツ奨学金をトランス女性が持っていくのはケシカランと、シスジェンダーの女子高校選手が裁判を起こしていたりする*7。そう言えば、ストックさんもトランスジェンダーの定義にこだわっていた。確かに、今のトランスジェンダー女性/男性の定義は識別可能性が無いもので*8、Twitterだけの話のように書いてしまうのはよろしくない。

*1サイバーフェミニズムはトランス排除を正当化できない②|社会科学初学者のアライさん(シャライさん)|note

*2関連記事:そんなデータで男女間の統計的差異を認めてしまっていいと思う?

*3雑にジェンダーギャップを示して、男女差別の存在を立証した気になれるようだ。アメリカの男子生徒の成績の悪さを持ち出して、アメリカは女尊男卑社会だと言われても困ると思うが。

*4関連記事:なぜ女は昇進を拒むのか — 進化心理学が解く性差のパラドクス

*5シャライさんは、男のような外見のトランスジェンダーばかりではないとか、男のような外見のシスジェンダーもいると言うような議論を展開していたが、外科手術もホルモン投与も受けていないレズビアンのトランスジェンダー女性は確かにいるようであるし、平均的な男性の筋力を超えるシス女性は1%未満だったりするし、男女の骨格構造はかなり違いがあったりする。恐怖だけではなく、実際に英国でトランスジェンダー女性の囚人が他の女性受刑者に性的暴行を加え、しかも再犯だった事件が問題になったこともある(Daily Mail Online)。

*6Open Future - Changing the concept of “woman” will cause unintended harms | Open Future | The Economist

*7トランスジェンダーの選手の出場は不公平 米で女子高生が提訴 | NHKニュース

*8関連記事:「トランスジェンダー女性は女性なのだから、女性として取り扱わないと差別」にどう反論すべきか

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